約 774,020 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3508.html
夏休みも終盤に差し掛かり、当然のことに宿題がまだ終わっていない俺は焦っていた。 去年もそうだったから、それを察することはハルヒにも容易にできたのだろう。そう、今俺はハルヒの家で宿題を手伝ってもらっている。 「お前が俺ん家に来いよ」という俺の願望的提案も「いやよ、暑いし」というハルヒの一喝によって一掃されてしまった。 宿題をやり出して二時間、よくぞ俺もここまで集中力が切れていないな、と自分に感心している俺はハルヒの部屋のテーブルで黙々と宿題をしている。 そして三十分前から部屋の片隅のベッドで可愛い寝息をたてて寝ているハルヒが、ちょっとばかし今の俺の癒しアイテムとなっている。 ま、今の俺の状況説明はこんなもんでいいかな。 宿題が飽きてきたところで気晴らしにでも思って、ハルヒの部屋の押入れらしき襖を開けてみた。そこ、最低とか言うんじゃない。 その中のダンボールから出てきた何枚かの作文用紙……なるほど、こりゃハルヒの昔の作文だな。つまらないとか言ってた割には、こういう物を取っておいてるのかよ。 「何々……? 『しょうらいの夢』二年一組、すずみやはるひ……可愛い文字だな。」 しょうらいの夢 二年 一組 すずみや はるひ あたしは、しょうらいすてきなおよめさんになりたい……なんてことは、ぜったい言わない。 恋なんて、いっしゅんの気のまよいであって、何かのびょうきの一種なのよ。 あたしの夢は、ずっと楽しく生きて、一生を終えること。それが、あたしの夢。 ……終わりかよっ! 随分短い作文だな……しかもなんだ、この小学二年生に有るまじきこの可愛くなさ。 まあこいつらしいと言えば、こいつらしいけどな。次見てみるか。 最近のこと 一年 一組 涼宮 ハルヒ この前、あたしは学校のグラウンドに宇宙人へのメッセージを書いた。すごい時間がかかっ たのよ?とてもあたし一人でなんかできなかったわ。でも、そんなあたしの元に一人の変態が 来たの。なんか、女の子一人背負った高校生みたいな奴だったわ。どこかの誘拐犯かもしれな いわね。でも、その変態はあたしのメッセージ書きを手伝ってくれたのよ。この世にはおかし な奴も居たものね。 中学一年の時の作文か……作文の短さも内容も全く進歩していない。しかもこの変態って……いや、やめておこう。 先生も呆れていたんだな。元から諦めていたに違いない。 さて次の作文で最後か。どれどれ? これは……高校一年のものか。 恋 一年 五組 涼宮 ハルヒ 恋。それはあたしにとって、一生無縁なことだと思っていた。でも、それは…もしかしたら 違うのかもしれない。いや、別に今あたしが恋をしてるわけじゃない。というか、元々恋とい うものはどんなものなのか、よく分からなかったりする。 今年の春。あたしは、ある男と出会っ ……ここまでが俺が読み取れた範囲である。何故これ以上読めなかったのかって? 文字が汚かったわけでも、紙が破れていたわけでもない。 ハルヒの制止によって、俺の行為は妨げられたからである。 「何してんの? …って、あっ、それ!!」 一気に作文を全て取り上げられた。まずい、怒らせちまったかな? 「こ、このバカキョン!! これ、最後まで読んだの!?」 「いや、途中までしか…」 ハルヒは動揺していた。何故顔が真っ赤なんだい? 団長さん。 「途中までって、何処よ!!」 「…さあな、忘れちまった。」 「勝手に人の作文見るなんて最低っ! 今すぐ出てけーっ!!」 ハルヒは走るチーターのスピードの如く俺を追い出した。そんなに嫌だったのか? …そうか、そうだよなぁ。 少し反省しつつ、俺は家に帰っていった。新学期、謝っておくか。 一方、ハルヒの部屋 「作文の最後の文章……『あたしがこの男に抱いている感情こそが、恋なのかもしれないわ。』……こんなの見せられるわけないじゃない! なんでこんなの書いたのかしら……自分が自分を許せないわよ、もうっ!」 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4639.html
長門有希がある気掛かりな夢から目が覚めると、乳房が大きくなっていた。 極めて起伏の少ない体に設定されているにもかかわらず、今の大きさは涼宮ハルヒの乳房に匹敵する。しかも、圧迫すると白濁した分泌物が噴出する。 「……身体情報の改変を検出。原状回復のための有機情報連結解除及び再構成を申請する。」 普段の自分の体とはあまりに掛け離れたこの姿。このまま登校するわけにはいかない。 『Application was rejected.』 しかし、申請は拒絶された。その他、見た目だけを元に戻すなど様々な回避策を講じたものの、それらはすべて拒絶された。 ここまで状況証拠が揃えば間違いない。この現象は涼宮ハルヒの仕業と断定できる。そして、彼女がその状況を強く望んでいることも。 では、どのような対策を講じるか。様々な方法を検討した結果、学校に連絡した上で午後から登校することにした。 放課後の文芸部室。既に噂になっていた有希の現状を確かめようと、全速力で部室に飛び込んできたハルヒは、我が目を疑った。 「ちょっと、有希! どうしたのよ、その胸は……!」 変わり果てた……細身であるため余計に胸部の隆起が目立つ有希の姿に、文字通り目を丸くする。 「今朝起きたら、腫れていた。」 「腫れてるの!? 痛くない?」 「すこし。」 ハルヒは心配そうな顔で有希を見ている。 「しかし、すごい変化ね。腫れてる以外に、何か変わったことはない?」 「他には、圧迫すると、白濁した分泌物が出る。」 「……え?」 有希の冷静な状況説明に、ハルヒの動きが止まる。 「分泌物を出すと、少し痛みが和らぐ。しかし、時間が経つとまた張ってくる。」 「ちょ、ちょっと、有希! お、おっぱいを搾ると、白い液体が出るっていうこと? それって、まさか……!?」 「…………?」 有希は、ハルヒが何が言いたいのかを理解できなかったが、次の言葉で理解した。 「うちの娘を孕ました奴は、どこの馬の骨じゃぁぁぁぁ!! シゴウしゃげたる!!」 ハルヒは般若の形相で絶叫していた。 「まずは検査薬で物的証拠を固めてから、相手に迫るわよ! もちろん、とりあえず動かなくなるまで殴ってからね!!」 そう言って今にも薬局・薬店に駆け出そうとするハルヒのスカートのベルトを、有希の指がしっかりと捉えていた。 「たわわ!? ちょっと、有希! どこ掴んでんのよ! スカートが脱げちゃうじゃない!」 ずり落ちたスカートを引き上げながら、ハルヒは非難した。しかし、有希は平坦な声で、 「まずは落ち着くべき。」 「これが落ち着いていられますかって!」 髪を振り乱して絶叫するハルヒに、有希はなおも冷静に告げる。 「妊娠の事実はない。これはただのホルモンバランスの崩れ。生理不順の類と同じ。」 「何ですって!? そんなこと言ったって、あんた。その膨らみ方は尋常じゃな……」 「わたしは、男性とそのような関係を持ったことはない。」 「…………」 なおもジト目で睨むハルヒに、有希は真摯な瞳で、 「……信じて。」 ハルヒは、やがて溜め息を一つついて、 「……まあ、あたしだって、有希がそんなことしてるとは信じたくもないわ。」 「午前中に診察を受けてきた。取りあえずは経過観察となった。」 「そっか。様子を見るしかないのかしらね……」 取りあえず落ち着いたハルヒは団長席に着き、有希も定位置で読書を開始した。 ハルヒはPCでネットの情報を検索しながら、有希の方をちらちらと見ている。しかし、やがて我慢できなくなったのか、 「……ねえ、有希。今、胸が張って痛い?」 「……わりと。」 「えっと、お、お乳を出せば、しばらくは痛くないのよね?」 「そう。」 ハルヒは席を立つと、部室の扉を施錠して、有希の背後に回りこんだ。 「分かったわ。ちょっとじっとしてなさい。」 そう言うとハルヒは、有希の乳房を揉みはじめた。 「勘違いしないでよね。これは、『治療』なんだから。」 さっき熱心に調べていたのは、「母乳の出を良くするマッサージの方法」だったらしい。 「服の上からだとやりにくいな、やっぱり……有希、ちょっとごめんね!」 ハルヒは有希の制服をめくり上げ、そして絶句した。 「サ、サラシ……」 有希の胴体には、隙間なくサラシが巻かれていた。 「突然大きくなったので、下着のサイズが合わなかった。」 「だからって、何もサラシを巻かなくても……Tシャツとかさ。」 「Tシャツでは、乳首の突起を隠せなかった。」 「……病院に行った足で、買いに行けば良かったんじゃ……」 「うかつ。気が動転していて、そこまで意識が至らなかった。」 「いや、まあ、そうよね。朝起きたら、いきなりそんなことになってたんだよね。ごめん。ああ、でも、ぐっしょり濡れちゃってるわね……」 サラシの胸の部分には、二つの染みが広がっていた。 「そのままだと色々まずいから、一旦サラシを取るわよ。」 丁寧に巻かれたサラシを、丁寧に取り去ると、有希の乳房が顕になった。 「うわ、でっかい……じゃなくて。オホン。さっきも言ったけど、これは治療だから!」 ハルヒは顔を真っ赤にしながら、乳房や乳首のマッサージを始めた。 「有希のおっぱいを揉んでるなんて、何か信じられない気分だわ……あっと! 飛び出た……」 無表情で胸を揉まれる少女と、だんだん無口になっていく、胸を揉んでいる少女。一種異様な光景が続いた。 「そろそろいいかな……」 乳房を入念に揉んだ後、ハルヒはおもむろに有希の『ぼにう』をむさぼった。 「……ぷはっ! あー、念のために言っとくけど、そのまま飛ばすわけにはいかないでしょ? だからあたしが飲んで処理してるわけよ。OK?」 「……これが『母乳』と断定されたわけではない。ただの『膿』である可能性も否定できない。」 「いいの! 有希の体から出るものに、汚いものなんかないの! 美味しかったから大丈夫なの!」 そこまで言って、ハルヒは、はっと何かに気付いたように、 「い、今、何か、あたし、とんでもないことを口走ったような……」 激しく赤面しながら、もじもじするハルヒ。だが、やがて吹っ切れたように、 「これは治療行為、これは治療行為、これは治療行為、これは治療行為……」 うわ言のようにブツブツ呟きながら、また有希の『ぼにう』を吸い始めた。 「これは治療行為、これは治療行為、これは治療行為、これは治療行為……」 ひたすらブツブツ呟きながら有希の乳房に吸い付くハルヒは、自分の頭が有希に優しく……まるで母乳を吸う赤子を抱くように抱きかかえられていることに気付いていなかった。 「……ぷっはー! と、とりあえず、あらかた吸い尽くしたわ!」 しばらくの奮闘の末、ハルヒの「治療行為」は終了した。 「……かなり楽になった。」 「とりあえず乳首は防水も兼ねて、絆創膏でブロックしなさい。それならTシャツでも大丈夫でしょ。」 有希は無言で頷いた。ハルヒは早速、有希に絆創膏を貼る。その後は再びサラシを巻く作業になった。 結局その日は、有希の体調を考慮して、ということで、そのまま解散となった。 翌朝、有希が目を覚ますと、乳房が大きくなったままだった。しかも、圧迫すると白濁した分泌物が噴出するのも同じ。 「……原状回復のための有機情報連結解除及び再構成を申請する。」 『Application was rejected.』 今日もダメだった。これは、またハルヒに『ぼにう』を吸われることになるだろう。 「涼宮ハルヒは……わたしの胸を揉んだり吸ったりしたいと欲している……?」 もしそうならば、彼女が満足するまで、この状態は続くだろう。 有希は、新しい下着と搾乳機の購入を真剣に検討していた。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2750.html
ハルヒニート第二話『掃除』 ハルヒ「おはよう、朝ごはん出来てる?」 俺より遅いとはいえ、一応ハルヒも朝はちゃんとした時間に起きている。もっともそれは、俺がいるうちに起きないと朝ごはんが食べられないから仕方なくといった感覚だと思うがな。 まあそんなことはどうでもいい。今日まで俺はある一つの作戦を考案、実行に移すべく準備してきた。そしてそれを今から実行する。名付けて『ハルヒ更正プログラム! あしたのためにその1』だ! キョン「ハルヒ、お前プリン好きだったな。これを見ろ」 ハルヒ「そ、それは!? 神戸屋で一日100個限定販売の高級クリームプリン! でかしたわキョン!」 と、ハルヒがそれを食べようとしたところで俺はひょいっとプリンの乗った皿を持ち上げる。 ハルヒ「なにすんのよ!」 エサを取られた猛獣の如くハルヒが抗議した。その顔の前に俺は一本立てた人差し指を突き出して言う。 キョン「ハルヒ。プリンを食べたければ条件が一つある」 ハルヒ「条件? なによ一体?」 キョン「今日、俺が帰ってくるまでに部屋をキレイに掃除しておいてほしい」 俺は俺なりにハルヒを更正させることを考えていた。そして、とある本で見たのだが、『部屋を自分の手で掃除することで、そういうだらけた心も綺麗に退散する』という項目を見かけたのだった。 確かにハルヒの生活空間である俺の部屋は、カップ面の空容器やらなにやらで散々な散らかりようで、見ているだけで気分も滅入ってくる惨状だった。 だから、ニートハルヒ更正プログラムの第一歩として、俺は本人の手でこの荒れ果てた部屋を掃除させることにしたのだった。 ハルヒ「掃除? ふん、別にいいわよ。それよりさっさとそれ寄越しなさい!」 キョン「約束だからな、まあそのプリンは前金だ。帰りにまた同じのを買ってくるから、しっかり頼んだぞ」 ハルヒ「本当!? わかったわ! 約束だからね!」 俺はそう確認して、ハルヒと二人で朝飯を食ってから家を出た。 珍しく朝出て行く俺をドアの前まで見送って手を振っていたハルヒの姿は、まるで愛する主人を送り出す若妻のようにかいがいしく俺の目に映ったが、「プリン忘れんじゃないわよ!」との言葉で台無しだった。 朝の満員電車にもだいぶ慣れたが、やっぱり慣れても楽になるモンじゃない。 乗客の中にはこのイモ洗い地獄の中で新聞紙を広げる余裕まで持った猛者がいるが、俺はひたすら潰されないようにつり革に捕まるだけで精一杯だった。 だが今日は少し気分も軽い。少なくとも、仕事から帰って汚い家を掃除する手間が掛からないと約束され、さらにハルヒが元気な状態に戻るかもしれないときている。これなら一個600円とかいう暴利のような値段のプリンも安いものだ。 と、まあそんなことを考えながら俺は仕事を終え、約束通りにハルヒへのお土産を買って家に帰った。 キョン「ただいま」 おお! 思わずそう歓声を上げたくなった。部屋は見事に綺麗に片付いていた。 今朝までの『実録! これがひきこもりの部屋だ!』といった感じだった惨状はすっかり様変わりしていた。 結婚した男の喜びの一つに、帰ったら妻が部屋を掃除してくれていることと聞いたことがあるがそれも頷ける。 まあその妻にあたる存在がパソコンとにらめっこしてオンラインゲームをしていることだけが玉に傷だが贅沢は言うまい。今朝まで部屋に散らかっていたあらゆる物は異次元に吸い込まれたかのように完全にその姿を消失させていた。 キョン「ハルヒ、帰ったぞ」 ハルヒ「うん、ちょっと待って、今戦闘中で手が放せない」 てっきりプリンに飛びついてくると思っていたが、ハルヒにとって一番大切なのはゲームであってプリンでも帰宅してきた俺を迎えることでもないらしい。 キョン「はあ、お前は俺よりそのゲームのほうが大事なんだな……」 何気なく愚痴をこぼして、買って来たプリンを冷蔵庫に入れようとしたときだった。 ハルヒ「ああ!! あんたが変なこと言うから気が散ってミスして死んだじゃない!!」 そう言ってハルヒが立ち上がってこっちに歩いてきた。 ハルヒ「もういいわよ。それで、お土産ちゃんと買って来たわよね!?」 子供のように目をきらきらさせながらハルヒが言う。俺は「ほらよ」と紙箱に入ったプリンを差し出した。 ハルヒ「やったー! ありがとうキョン!」 ハルヒはさっそくスプーンを取り出して食卓に着いていた。 やれやれ。こんな何気ない一言でも救われるものだ。ハルヒが「ありがとう」と言ってくれた、その一言で俺は今日一日の働き疲れもその馬鹿高いプリンのこともどうでもよくなる。 人の存在価値ってのは役に立つ立たないだけじゃない、例えニートだろうとひきこもりだろうと俺にとってハルヒはあの頃のハルヒと何も変わらない。そう思えた。 ハルヒ「ちょっと、早くあんたも座りなさいよ! あたし一人で先に食べちゃうわよ!」 キョン「やれやれ。待ってろ、背広くらい脱いでから……」 そう言って、俺は脱いだスーツを片付けようとクローゼットを開いたときだった。 ドサドサドサドサ、そんな轟音と共に中から大量の衣類、本、ゲームソフト、その他もろもろが降ってきた。 全部今朝まで床に散らばっていた物だ。なるほど、どこに消えたかと思ったら全部棚に押し込んであったわけか。はははこりゃ納得だ。 ハルヒ「ちょっとなにしてんのよキョン!? せっかく片付けたのに台無しじゃない!」 …………俺はぶち切れた。 キョン「どこが片付いてる!? 散らかってた物全部集めて棚に放り込んだだけじゃねえか!! うわっ、しかもゴミまで混ざってやがる!!」 ハルヒ「なによ!! 片付けたんだからいいでしょ!? もういいわよ。プリンあたしが先に食べるからね」 呆れ果てて物も言えないとはこのことだ。俺はハルヒがまさにスプーンを差し込もうとしていたプリンを皿ごとつかんで一気に自分の口に押し込んだ。 ハルヒ「ああっ!! なんてことするのよバカキョン!!」 キョン「ふがもあひい! (やかましい!)」 さらにもう一つ、俺の分として買ってきていたプリンも一気にほお張って飲み込んだ。吐きそうなほどに甘ったるい。 ハルヒ「バカバカ!! なんて粗末な食べ方するのよ勿体無い! 吐き出しなさい!!」 キョン「こんな横着する奴にご褒美がやれるわけないだろ! 今から片付け直す! そしたらまた買ってきてやるから!」 ハルヒ「めんどい!! だったら今度はプリンじゃなくてケーキよ! イチゴのタルトとレアチーズケーキ!!」 ぎゃーぎゃーとわめいてブーたれながらも、俺が手伝ってやると言うとハルヒは大人しく床に散らかったゴミを拾い始めた。 何をやってるんだか、ハルヒの手で部屋を綺麗にさせるのが目的だったのに、俺が手伝っても仕方無いだろう。そう思ったときには、すでに部屋はきれいさっぱり片付いた後だった。 しかも時間もけっこう遅くなっていた。そろそろ風呂入って眠らないと明日がきつい。 キョン「やれやれ。風呂の掃除はまだだし、散々だな……。まあとりあえずお疲れ様だハルヒ、もういいからお前は先に寝ろよ」 ちなみにハルヒは滅多に風呂に入らない。たまに俺がいないときで気の向いたときにシャワーを浴びているそうだった。 ハルヒ「……ねえキョン。今日のお風呂掃除はあたしがするわ」 キョン「は? なんで」 ハルヒ「たまには私もゆっくり風呂に漬かりたいと思っただけよ。大丈夫、お風呂掃除の仕方くらい知ってるわよ。それじゃ、すぐ終わらせるからテレビでも見てて」 ハルヒはそういい残して風呂場に消えていった。 残された俺は一人で呆然としていた。 ハルヒが自分で風呂を掃除する? ホワイ? なぜ? あの全てにおいて自堕落で、落ちた箸すら自分で拾わないようなハルヒが風呂掃除をするだって? キョン「ひょっとして……さっそく効果ありってことか……?」 だとしたら実に喜ばしいことだった。 この調子でだんだんとハルヒが活動的になってくれれば、いずれあいつも職探しに目覚めるかもしれない。 いや、そこまで言わなくてもせめて俺が仕事に出ている間に部屋を掃除したり、夕食を作って待っててくれればもう十分だ。(ん? それってなんか…………まあいいか) ハルヒ一人に風呂掃除をさせるのはさすがに悪い、そう思って俺は浴室の扉を開けた。二人でやった方が早く済ませられるだろうからな。 キョン「ハルヒ、俺も手伝ってやるよ…………って、なんだこれはっ!?」 ハルヒ「あ!? ちょ、今入ったら駄目!!」 そういえば、さっき片付けをしながらも、妙に物が少ないんじゃないかと思った。 ゲームソフトや漫画本にしても、もうちょっと数があったんじゃないかな、そう思っていた。 それらはどこに消えた? その答えは、なぜか衣類、本、ゲームソフト、その他もろもろがたっぷり詰め込まれた浴槽が教えてくれた。 俺は今度こそぶっ倒れた。ハルヒ更正への道のりは果てしなく遠く険しい。 ハルヒニート 第二話 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4844.html
「涼宮ハルヒの歓喜~サンタが町にやって来た~」の続編です。 12月25日。今日が本当のクリスマスだ。 しかし、町は気の早いもので華やかな装飾は剥がされ始め、 次は正月へと向けて彩りを変えている。 学校も明日から冬休みに入る為、終業式という事で学校に来たのだが、 「う~…」 どうやら俺はサンタのトナカイ探しやらパーティーの後の一件で 雪の降る真冬に外をウロウロ歩き回ったせいで 少し風邪を引いてしまったらしい。 しんどい…咳が止まらない…休めば良かったかも。 しかし、熱っぽいのはそれだけが理由ではないだろう。 クリスマスが終わったというのに俺は未だに浮かれ気分が抜けない。 昨日の夜は結局、眠れずじまいだった。 一晩中、落ち着かなくてモソモソと動いていた。 とうとうやっちまった…俺はとうとうやっちまったのだ…あのハルヒに… いきなりあんな事やるなんてあの時の俺はどうかしちまってたのか!? いきなりハルヒに抱きついて、今でも思い出すと 恥ずかしくて顔が真っ赤になりそうな台詞吐いて、 手を繋いで…やばい、また熱が出てきた。 その後、結局ハルヒを家に送り届けるまでの道で 2人共、照れと恥ずかしさでお互いまともに顔を見る事も 言葉を交わす事さえも出来なかった。 別れ際の「おやすみ」が精一杯だった。 俺はどんな顔してりゃ良いんだ? ハルヒはどんな顔して後ろの席に座るのだろうか? 緊張してきた…やっぱり今日は学校休めば良かったかも。 昨日の夜は全っ然、眠れなかったわ…。 どんな顔して学校行けば良いのよ? 普通に「おはよう」とか言って席に着けば良いかしら? でも、それだと何にもなかったみたいに受け流す冷たい嫌な女だわ… かと言って今更、可愛い子ぶりっ子なんて出来ないし!したくもないし! あぁ!!もう!!こんなの中学までで散々慣れてたはずなのに! なんでキョン如きにこの私がここまで悩まなされきゃいけないのよ! 雑用係のくせにいきなり団長様を抱き締めてくるとか反則よ! キャラ崩壊の危機だわ! とりあえず、今日は早めに学校行って絶対、キョンより先に席に着かなきゃ。 やっぱり何事も最初が肝心なのよ! イニシアチブは常に私が握っておかないと! 「あいつ…なんでもう教室にいるのよ!!」 早いわ!早過ぎるわよ!だってまだ7時半前よ! 全校生徒のほとんどがまだ来てないし、絶対に私が一番乗りだと思ってたのに! 教室に二人っきりなんて余っ計に気まずい空間じゃないのよ! 仕方が無いわ、とりあえず時間稼ぎに部室棟に…あっ…… 突然、教室の扉が開き、キョンと目が合った。目の前に立っている。 「おぅ…」 2人共、突然の事に驚いて固まっていたかと思うと咄嗟に視線を逸らした。 「あの、その、何だ……」 「……な、何よ?」 黙ってないで何か言いなさいよ! 「い、いや…お、おはよう…」 「おはよう…」 「…ちょっとトイレに行ってくる!」 キョンは廊下に出てトイレの方へと歩いて行った。 びっくりしたぁ~…何でいきなり出てくんのよ!?バカキョン!! びっくりしたぁ~…何で突然目の前に現れるんだよ!?ハルヒ!! でも、これで予想外とはいえ何とか挨拶は出来た。 これで少しは落ち着いて行ける!(はず…) 教室に戻るとハルヒはこちらに背を向けて窓の外の遠くの方を眺めている。 配置から考えるに俺の方から声を掛けないと行けない状況のようだ。 くそっ、やられた…せっかく朝に弱い俺が頑張って早くから学校に来て ポジションを先取してたのにトイレに行ったせいで攻守交代だ…。 席に座って待っているとキョンが戻ってきた。 やっぱりまだ恥ずかしくて顔を見る事が出来ない。 わざとらしいかなと思いつつ、頬杖をつきながら 窓の外の空から降ってくる雪を見ていた。 「今日は早いんだな」 あんたのせいよ! 「ま、まぁね…終業式だし、一年の最後くらいはきっちり締めたいじゃない!? あんたこそ、早いわね!」 「あぁ、そうだな…」 なんて可愛くない返事しか出来ないのよ!私! 2人しかいない朝の静かな教室に気まずい沈黙が流れる…… 突然、キョンが咳き込んだ。 「あんた、風邪引いてんの?」 「あぁ、ちょっとな」 「うつさないでよね、別に今日くらい家で寝ときなさいよ! どうなっても知らないわよ!」 違うわよ!私の馬鹿!そんな言い方無いでしょうが! 「いや、今日だけは何があってもちゃんと学校来たかったから」 え? 「いや、その…あの…昨日のあれ、な……」 そこまで言ってキョンは顔を逸らし、会話が途切れた。 「まさか、あんた、あんな事しといて冗談でしたとか言うつもり!?」 そんなのマジ、許さないわよ…。 「いや!違う!あれだ…それは何というか…逆だ…」 「逆?」 「昨日のあれな…あれ、本気だから。 それだけはメールや電話じゃなくて今日、ちゃんと直接会って言いたかったんだ。 そうしないとお前に怒られそうだからな」 「あ、ありがと…」 と、言うハルヒの俯きながら見せた、はにかんだ笑顔はすこぶる可愛く 熱に浮かれた頭と理性は吹っ飛びそうだった。 「なぁ、ハルヒ…」 「な、何?」 ハルヒは顔を上げ見開いた目をこちらへ向けている。 「今日、終業式出るか?」 「え?」 「いや、通知表も貰ったし、今日やる事って終業式くらいだろ? 学校サボって抜け出さないか?」 ハルヒが俺を無理矢理連れ出す事は何回もあったが、 俺からハルヒを引っ張り出すのは初めてのような気がする。 「サボってどうすんのよ?」 「なんか今日はハルヒと2人だけでいたい気分なんだ」 昨日の夜から何度もシミュレーションしてきたとは言え、 実際、口に出すと我ながらなんてキザな台詞だ… 「私は別に良いけど…でも、あんた風邪引いてるんでしょ!? こんな寒いのに外に出るなんて無茶したら…」 そういうハルヒの手と鞄を俺は有無を言わさず取り上げ、歩き出した。 「ちょっとキョン!どこ行くのよ!?」 そんなの決めちゃいない。 「今日は…デ、デートだ!!」 やっぱり今日の俺は相当、熱がある。暴走気味だ。 俺達は2人で何回、この坂道を行き来したのであろう? まだ生徒の数も片手で数えられるほどにしかいない坂道は雪で凍っていた。 足を滑らせないよう一歩ずつ踏みしめながら歩く。 ハルヒと2人で歩くなんて散々慣れていた事なのに今日はいつもと違う。 俺が前を歩き、ハルヒの手を引いている。 心臓が脈打ち、ただ一緒に歩いているだけで素直に嬉しい。 坂を下った所でハルヒが足を止めた。 「キョン!これからどうするのよ!?」 確かにここまで来ちまったが、さて、どうしよっかな? 「まだ何も決めてないが…」 そういうとハルヒは溜息をついて呆れたような顔をしている。 「あんた、本当に計画性のかけらも無いわね!」 お前にだけは言われたくない! ハルヒは鞄から昨日、俺があげた手袋を取り出し、はめていた。 「ほら!あんた、風邪引いてるんでしょうが!」 と、ハルヒは俺の鞄を無理矢理あさり、 昨日ハルヒから貰ったマフラーを取り出して俺の首を思いっきり締めてきた。 「く、苦しい、息が出来ないって!」 「いい気味よ!キョン如きが私に命令するなんて100万年早いの!だから罰よ!」 と、言うハルヒは俺に太陽のような笑顔を向けていた。 2人でこの道を横に並んで歩いていこう。 どっちが前でも後でもなく、2人並んで手を繋ぎ。 横を向けばあなたの顔が見える場所。 ここは他の誰にも譲りたくない指定席。 あなたの目が、鼻が、耳が、頬が、髪の毛が誰より近く見える場所――― ただ、雪の中を2人で手を繋いで歩いていた。 どこへ行くか、とか何をどうするかなんて目的がある訳じゃない。 ただ、俺はハルヒと一緒にいたかっただけ。誰にも邪魔されずに。 「ねぇ、キョン」 ハルヒはボーッとした顔で訊ねてきた。 「ん?なんだ?」 「あんたバスって乗った事ある?」 なんだそりゃ? 「そりゃあるに決まってんだろ」 「じゃあ、あのバスってどこまで行くか知ってる?」 ハルヒが指差す先には停留所に白いバスが止まっていた。 「さぁ?マニアじゃないから知らんな」 「じゃあ、乗ってみましょう!どこに向かうか探検よ!」 そんなハルヒの子供じみた思いつきはいつもの事だから驚きはしない。 むしろ、外は寒いからバスで移動するっていうのは悪い手じゃないな。 バスに乗ると朝にも関わらず誰も乗っていなかった。 人が集まる場所とは反対方向に走っているからだろう。 「空いてるな」 どこに座るかと考える間もなく、ハルヒは一番奥へとズンズン進んで行く。 「やっぱりバスは一番奥の席に限るわね!」 と、やたら嬉しそうな笑顔をしてドカッと座り込んだ。 「まぁ、奥は席が広いからな」 「あと、乗ってる人間全部が見渡せるのが良いのよね! この世の支配者~!って感じで!」 いや、それは意味が分からん…。 バスはゆっくりと音を立て雪の中を走り始めた。 揺れる度に隣に座るハルヒの細い肩がぶつかる。 バスが静かに動きを緩めて止まった。 停留所で誰かを乗せるようだ。 「さぁ、どんな面白い人が乗ってくるかしら?」 別に普通の利用客だと思うがな。 バスに乗ってきたのは老夫婦だった。ゆっくりと歩を進めている。 二人とも身体のどこかが悪いのだろうか? お互いがお互いを支え合うよう、補い合うようにこちらへと歩いてくる。 おじいさんの方が俺達に話し掛けてきた。 「おや?珍しい。この時間に人が乗ってるとはの」 「こちらどうぞ」 ハルヒは立ち上がって席を譲ろうとした。 「ありがとう。どう?一緒に座りましょうよ」 おばあさんは柔和な笑顔で俺達に促してきた。 「うちのばあさん、一番後ろの席が好きでな。 広いから夫婦で座っても誰か他の人とも一緒に座れるからって。 それが好きなんじゃよ」 俺達は席を詰め、おじいさんは優しく笑いながらおばあさんをそっと座らせた。 バスは再び、ゆっくりと走り始めた。 「君らのその制服、北高じゃろ?」 おじいさんは俺達に視線を向けている。 「はい」 礼儀正しいハルヒは久し振りに見た気がする。 おばあさんが笑いかけてきた。 「と言う事は終業式をサボって2人でデートね?」 「これ、ばあさん!」 見事にバレた…色々言われたら面倒だな。と考えた俺を見透かしたようだ。 「ふふ…大丈夫よ。私達も高校生の時にお互い授業や式を抜け出ししたものよ、 昔は見つかると大変だったけど」 おばあさんは昔を懐かしむように笑っている。 「このバスに乗っておるという事は港に行くんじゃな?」 港? 「終点じゃよ。最近は港にデートへ行くのが増えておるらしいからの。 よくある、そこで結ばれたら一生結ばれるだなんだの言う話じゃよ」 「私達の頃は何もなかったから2人でいるのに都合が良くて 港へ行ってたけど、時代は変わってるのね」 2人は笑っている。 「あそこで初めて結ばれた2人っちゅうのは恐らく儂らの事じゃよ」 「またその話ですか、おじいさん。いつも言ってるんですよ、この人」 恐らく、その噂や伝説を広めたのがこの2人なんだろう。 まぁ、生き証人が目の前にいる訳で嘘はついてないから文句も言えないが。 「喧嘩もいっぱいしたし、一生結ばれるなんてそんな可愛いものじゃないけど それはそれで悪くはない、楽しいものよ」 2人の幸せそうな笑顔を見ていると納得せざるを得ない。 「じゃあ、儂らはここで。席を譲ってくれてありがとう」 おじいさんは俺に意味ありげな視線を投げ掛けてきた。なんだ? 2人はバスを降りて行った。 「ああいう夫婦って良いよな…」 俺は何気なくぽつりと思った事を口に出しただけだったのだが… 「なっ、何言ってんのよ!?バッカじゃないの!?」 何故かハルヒは真っ赤になって怒り出した。 「でも、まぁ面白そうね!キョン!港に行きましょう!」 おいおい、まさかあんな伝説を信じた訳じゃないだろな? 「そういう伝説は見過ごせないわ!何かあるかもしれないじゃない! 不思議探索よ!ねっ!」 まぁ、時間を潰すには最適か、俺が引っ張り出した事もあるしな。 ハルヒがこんなにご機嫌になるなら断る理由も無い。 メールが来た。ハルヒと2人同時に終業式をサボったから また谷口あたりがからかいのメールでも寄越したんだろう。 無視だ、無視。 バスは静かに終点へ滑り込んで行った。 終業式も終わり、部室に足を運んでみると長門有紀の姿しか見えなかった。 「おや?長門さんだけですか?皆さんはどうされました?」 「朝比菜みくるは先程来室し、すぐに立ち去って行った。あとの2人は不明」 そうですか…彼と昨日サンタクロースに貰ったゲームをやりたいと 思っていたのですが、いないのでは仕方がありませんね。 「では、僕もここでしばらく時間でも潰しましょう」 港に着いて歩いてみると綺麗に舗装はされてあるが平日と言う事もあり、 誰も人がいないようだった。 きっと夜景が綺麗になる時間に人が集まって来るのだろう。 時折吹く強い潮風がハルヒの髪を巻き上げる。 「うぅ~…寒いわね!!」 何に対して怒ってるんだ? 雪が海に散りばめられる宝石のように落ちては消えていく。 「まぁ、景色としてはなかなかのものね!とりあえず合格にしといたげるわ!」 またハルヒは訳の分からない事を言っている。 寒さのせいで鼻水が出てきた…。 「汚いわね!!ほら、これ使いなさいよ!!」 ハルヒは鞄の中からポケットティッシュを出してきた。 「ありがと、これ貰って良いか?」 「好きにしなさい!!」 さっきから笑ったり怒ったり忙しい奴だ。 そういうハルヒを見てるのは面白いんだけどな。 「何、ニヤニヤしてんのよ!?気持ち悪いわね!!」 「ん~?いや、コロコロと表情が変わるから面白い奴だなぁ~と思って」 俺は今、意地悪な笑い顔になってるに違いない。 「う、うるさいわね!!」 ハハ…今度は真っ赤になって照れてる。本当に面白い、そして… 「…可愛いな」 お、今度は驚いて目を見開いている。 「バ、バ、バッカじゃないの!?あんた何!? さっきから私の事、馬鹿にしてんの!?あんまり調子に乗ってると…」 ―――!!! ハルヒのよく動く唇を塞いだ。 町の喧噪は消え、静かに降る雪も動きを止めた。 風の音だけが遠くで聴こえる。 時間が止まったかのようだった。 「……ちょっと調子に乗り過ぎたからまた罰金かな?」 「本当に調子に乗り過ぎよ…馬鹿…」 ハルヒは俺の手を握り締めたまま俯いている。 「もうちょっと雰囲気とかタイミングってもんがあるでしょうが… 本当にデリカシー無いわね、バカキョン…」 「ハハ…すまん。あと俺、風邪引いてるのすっかり忘れてた…ハルヒにうつるかもな」 ハルヒが抱きついてきた。 「もし風邪引いたら責任取りなさいよね…」 「そうだな、分かった。」 この笑顔をずっと守っていこう…俺はそう誓って 昨日よりも、もっと強くハルヒを抱き締めた。 「あと、ハルヒ……」 「……何よ?」 「お前の唇って柔らかくて暖かいな」 鞄で思いっきり殴られた。 新しく手に入れたボードゲームの説明書を読みながらゲームの研究をしていた。 彼にはかなり大きく負け越してしまってますからどうにかして 勝ちを積み重ねていかないと卒業までに逆転するのは難しそうです。 彼は僕の予想ではきっと人類史上、類い稀なるゲームの達人、 恐らく天才なのではないかと考えています。 まぁ、彼以外とはあまりゲームをやる事はないのですが…。 そういう意味では彼も涼宮さんに選ばれた特異なる人間の一人なのでしょうか? そんな事を考えていると携帯が鳴った。どうやらメールが来たようです。 機関から?閉鎖空間発生?彼らはどこへ行ったのでしょうか? また彼は凉宮さんに何かしでかしたのでしょうか? 「長門さん」 長門有紀は何かを察知しているのか、もうすでに僕の方へ視線を向けていた。 「もし彼らが来たら伝えておいて下さい。急なバイトが入ってしまいました、と」 「…了解した」 ハルヒは照れているのか俺の顔を全く見てくれない。 と言う俺も心臓が破裂しそうなのだが…。 気が付いたらお昼を過ぎていた。どおりで腹が減る訳だ。 どこかで昼飯でもと思ったが、終業式も終わってる時間だろうし、 途中で何か買って部室で食べようと言う事になった。 学校へ戻る為、バスが来るのを待つ停留所は寒い。 缶コーヒーを買って2人で手を暖め合った。 バスに乗るとハルヒはまた一番奥の席へとズンズン進んで行った。 よっぽど一番奥の席が好きなんだな…。 この時間帯は乗客もまばらで俺達の他には数人しか乗っていない。 ハルヒは俺の手の上に細く長い指を絡ませている。 車内は暖房が効いていて暖かい。 エンジンの心地良いリズムと揺れも相まってハルヒは眠気が襲ってきたのであろう。 俺の肩に頭を乗っけて眠りこけている。 子供のような寝顔だ。 かくいう俺も少し眠くなってきた…。 俺も少し居眠りしようかと考えた、その矢先だった。 大きな音と衝撃と共に目の前が雪化粧に包まれたように真っ白になった――― 大きな音と衝撃で目を覚ますとどっちが上か下か分からくなっていた。 キョンが私に覆い被さってきている。 「ちょっとキョン!いくら何でも調子に乗り過ぎよ! バスの中で私の寝込みを襲うなんて変態にもほどがあるわよ、エロキョン!」 キョンの体を突き飛ばそうとした。しかし、キョンからの返事はなかった。 「キョン……キョン?」 私の肩にキョンの腕がただ力なくぶらりと垂れ下がっていた。 ふと手に暖かい感触が残る。 血だった。 キョンが頭から血を流していた。 「嘘…いや…」 私はキョンにしがみついていた。 「嘘でしょ…冗談でしょ…やめてよ、キョン…ねぇ、キョン…」 自然と涙が込み上げてきた。人前でなんか泣いた事ないのに…。 「キョン!!!キョン!!!いやぁぁああ!!!!!!!!!!!」 私はありったけの大声で彼に向かって叫んだ――― 長門さんからのメールを見てズキンと胸に何かが刺さるような感触がして重くなった。 私が病院に向かうと彼らの家族、そして彼らのクラスメイトの何人かがいた。 キョン君の妹さんはキョン君の名前を呼びながら泣いている。 その中に長門さんと鶴家さんが静かに立っていた。 「みくる…」 鶴家さんは目を赤く腫らしていた。 事の詳細を訊ねると雪道でスリップした大型トレーラーが 彼らの乗っていたバスに突っ込み、バスが横転してしまったらしい。 その時にキョン君は頭をぶつけ、意識が無く現在、手術中だと言う事だ。 凉宮さんは精密検査を受けているらしい。 凉宮さんはキョン君が咄嗟に体を投げ出し、覆い被さったお陰で ほとんど無傷だったようだ。 精密検査を終えて出てきた凉宮さんはずっと 泣きながらキョン君の名前を叫んでいた。 凉宮さんの叫びが責められているようで胸に強く深く突き刺さる。 キョン君の手術は長引いた末に終わったようだ。 まだ意識は戻らず予断を許さない状態で集中治療室にいる。 私は…私には… 「ねぇ、キョンは…キョンはどうなったの?ねぇ、教えて!!」 私はひたすらに病院の廊下でそればかり叫んでいた。 それ以外に何も関心は無かった。 手術は終わったとは聞いた。でも、その後は誰も何も言わない。 キョンのご両親と医者がこちらへと歩いてきた。 お母さんの方が声を掛けてきた。 「あなたがハルヒさん?」 「はい、彼に……一目だけでも良いので彼に会わせて下さい!!」 キョンのご両親は医者の方へちらりと視線をやり、医者が頷いた。 「あなたも事故にあったのにこんな事頼むのもあれなんだけど 行ってあげてくれないかしら?」 キョンは眠っていた。 顔に傷も無いせいだろう、本当に眠っているようにしか見えなかった。 私は彼の手をそっと握った。 きっと私が無傷だったのはキョンが体を張って守ってくれたからだろう。 「ありがとう、キョン」 涙が溢れてきた――― その時だった。私の手をキョンの手がそっと包んできた。 キョンの目が静かに開く。 「キョン…キョン!!」 状況が掴めてないのかキョンは虚ろな目をしている。 「キョン!!」 こちらに視線を向けてきた。 「ハルヒ……」 私の涙がキョンの手に落ちた。 「ハルヒ、無事だったんだな……」 「…馬鹿。なんでこんな時まであんたは…人の心配する前に自分の心配しなさいよね」 私は無理して笑った。 「だ、団長命令よ…早く元気になりなさい… SOS団の活動はまだまだいっぱいあるんだから… それに…これからは…一緒に…2人で…」 私は声を出そうと思ったが、涙に遮られた。 「ハルヒ…」 「…何よ?」 「実は昨日の夜の…ドキドキであまり寝てないんだ……」 「…うん」 「だから、ちょっと寝かせくれないか…」 「…うん」 「…そんなに泣くなよ、笑ってるハルヒの方が俺は好きだぞ」 「…うん」 「おやすみ……ハルヒ…」 「おやすみ……キョン…」 2人は柔らかく、暖かく、そっと唇を重ねた……。 それは永遠よりも遥かに長い長い…一瞬の出来事だった―――― 私は…私には…止められなかった…。 分かっていても止める事は出来ないし、 止めてはいけない事だとも十分、承知していた…。 覚悟はしていた。でも…我慢出来ず、最後に一目だけでも会いたくて キョン君にメールをした…返事は来なかった…後悔だけが残る…。 自分の無力さに…そして皆で過ごした日々に…。 あれから三日後。 キョン君の葬儀を終えた私と長門さんは彼女の、凉宮さんの元へと向かった。 小泉君はあれ以来、姿を見せていない。 凉宮さんはキョン君の死が受け入れられず、まだ病院にいる。 治療室から運び出される時も彼の手を離すまいとしがみついていた。 凉宮さんの病室の前まで辿り着いたものの、なんと声を掛けようかなどと 入るのを躊躇っていると、声を掛けられた。 彼にいつもの笑顔はなく、暗く沈んだ顔をしている。 「小泉君……」 「先程、彼に会いに行ってきました。何というか…まだ実感が湧きませんね…」 「…私もです、小泉君はもう大丈夫なんですか…」 彼は寂しそうに首を横に振った。 「もはや世界は僕らの手の届かない状態になりつつあります。 大きく改変される事になるかもしれません。 機関の人間も様子を見守るしか出来なくなってしまいました…」 彼は彼なりにここ数日、大変だったのだろう。 キョン君や凉宮さんの事に思いを馳せつつ…。 「先程、彼のご両親からこれを預かってきました」 と、小泉君は封筒を取り出した。 「凉宮さんへの預かり物です。彼のノートに挟んであったようです」 僕ら3人で病室に入ると凉宮さんは重く暗く沈み、 ベッドの脇にある椅子に座って空を虚ろな目で眺めていた。 どうやら僕らの声は届かないらしい。 「これは彼から凉宮さんにあてた手紙のようです。ここに置いておきます」 窓際に封筒を置いて僕らは立ち去った。 凉宮さんに掛ける言葉も思い付かなかったからだ…。 凉宮さんの病室の前のベンチに座ると朝比菜みくるが静かに泣き出した。 「朝比菜さんは…」 誰もいない暗い病院の廊下に僕らの声が響き渡る。 「…この事実についてご存知だったんですか?」 朝比菜みくるは何も答えずにただ黙って頷いた。 「そうですか…だからクリスマスにサンタクロースが空を飛んでいる姿を 皆で見ようと提案なさったんですね…」 「…せめてこんな形になるとは言え、最後に皆で想い出を残したかったんです。 …私はこの出来事を見届ける為だけにこの時代に送られたと言っても 過言ではありません。それほど今回の事は未来においても重大な事なんです」 「…彼を助ける事は出来なかったんですか?」 言葉に出して酷い事を聞いてしまったと後悔した…。 助けられるものなら助けていただろう。その時、長門有紀が口を開いた。 「…これは彼の寿命。どういう形であれ、今年12月25日時点での彼の死は 確定していた。変更する事は不可能。例え、それは凉宮ハルヒの力をもってしても。 それはあなた達が一番よく理解しているはず」 これは長門有紀なりの僕らへの慰めの言葉なのだろう…。 「はい…今回の事は…未来では……き、規定……」 「朝比菜さん…」 僕は首を横に振り、彼女の言葉を遮った。 「少なくとも、僕らSOS団の人間にとって…… 彼の死は……決して、規定事項なんかじゃありません。決して……」 「……そう」 長門有紀は静かに頷いた。 12.24 ハルヒへ いきなり柄にも無く、手紙を書いてみようと思う。 何故なら、興奮して眠れないからだ! お前はどうなんだろうか?ハルヒ。 全く気にもせずに涎垂らしたアホ面で眠っているのだろうか? しかし自分自身でも不思議なんだ。 正直、お前に初めて出会った時は見た目はまぁ、悪くはないが、 頭の中身がぶっ飛んだおかしな女だとしか思っていなかった! 髪型も短くする前は時々、変だったしな。 それが新しく部活作るから手伝えってネクタイ引っ張られて階段の踊り場に 連れて行かれた時はカツアゲでもされてるような気分だった。 しかもSOS団なんて世の中の不思議を探す為とかいう妙な目的の元、 珍奇な集団を作って、俺は巻き込まれた感たっぷり。 でも、今は楽しい! 長門や朝比菜さん(まぁ、仕方が無いから小泉も入れといてやろう)、そしてハルヒ。 団長のお前がいてこそのSOS団だ。 お前がいるから楽しいし、面白いから俺もついつい部室に足を運んじまう。 最初は朝比菜さんと一緒にバニーガールの衣装で SOS団の勧誘ビラ配りしたり、(まぁ、あれはあれで悪くはなかったが…) コンピュータ研から無理矢理パソコン取り上げたり、 何の知識も無い俺にHPを立ち上げろと命令してきたり、 なんて無茶苦茶な奴なんだと呆れてばかりいた。 でも、考えたらハルヒと一緒にいる時はいつも笑える楽しい事ばかりだ。 皆で不思議探索をするのもなかなか見つからないが悪くはないし、 七夕に一緒に短冊作ったり 夏休みに孤島に合宿行ったり(夏休みは結局、ほとんどSOS団の皆で遊んでたし) 学園祭の為にSOS団の皆で映画作ったり(大喧嘩もしたが…) クリスマスには何故か鍋パーティーが恒例になったり、 雪山で遭難なんて事もあったな。 サンタが空を飛ぶなんていう不思議な事にもようやく巡り会えたし、 お前と過ごしているうちに俺のハルヒへの想いも少しずつ変わってきたんだろうな。 次は初詣か?俺の願い事はもう決まってるが教えないぞ。 人に教えたら願いが叶わないからな。 とにかく、これからももっと楽しいイベントが盛りだくさんだな! で、結局、俺は一体、ハルヒに何が伝えたいのかと言うとだな、 いきなり結論だが、昨日の夜、お前を抱き締めて言った事。 あれは本気だ。結構、緊張したがな。 そういや、ハルヒからのちゃんとした返事は貰ってないが、 何となく流れ的にOKだったのかな、と勝手に解釈しとくぞ。 だから、次のバレンタインチョコは義理じゃなくて本命でくれよな。 それともう一つ、ハルヒに頼み事があるんだ。 俺達、来年は受験生だろ? ハルヒがどこの大学に進むのか知らないけど、 きっと今の俺じゃ手も届かないような所だと思う。 だから頼む。俺に勉強を教えてくれ。 俺も頑張って1年でどうにかしてお前の成績に追いつくから。 だからハルヒ、一緒に同じ大学に行こう! そしてな、大学でまた俺達で新しいサークルを作ろう! その名も『SOS団』!!!! 悪くないアイデアだろ?問題は俺の成績なんだがな…。 これからまだまだたくさん楽しい事、笑える面白い事があるだろうし、 喧嘩をする事もきっとあるかもしれん。 だけど、これからもずっと宜しくな、ハルヒ!! SOS団・団員その一、兼雑用係のキョンより SOS団・団長様、そして世界で一番大切な恋人、ハルヒへ p.s.不思議探索の時の遅刻罰金制だけどな。 あれ、俺、一回も遅刻した事ないぞ。 皆、来るのが早過ぎるだけだ。あれだけは考え直してみてくれ。 枯れたと思っていた涙が溢れ出してきた…。 彼の深く、優しい想いが胸の中に流れ込んでくるようだった。 私も昨日の夜、眠れずに考えていた。 初詣のお願い事を…バレンタインにキョンにあげるチョコレートを…。 SOS団の皆でお花見行って…七夕には笹の葉飾って… 夏休みには合宿行って…海で泳いで… 学園祭では出し物やって… クリスマスには鍋パーティーやってプレゼント交換して… まだまだやりたい事がいっぱいあった…… なんでもっとあなたに優しく出来なかったのか… なんでもっとあなたの前で素直になれなかったのか… 後悔と寂しさの涙ばかりが頬を伝っていく…。 なんでもっとあなたと過ごす時間をかけがえの無いものだと大切に出来なかったのか… なんで…… ごめんね、キョン……そして、ありがとう、キョン…… 溢れる想いはもう言葉にならなくなった…… ただ、あなたと、もっと…ずっと…ずっと一緒にいたかった―――― The End 涼宮ハルヒの嫉妬へ続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6535.html
涼宮ハルヒの遡及ⅩⅡ どれだけの時間が経過しただろうか。 しかし、俺たちはボロボロになりながらも踏ん張り続けた。 「艦首超必殺撃滅砲発射!」 ハルヒが手を翳し、この砲撃だけは俺から撃たなきゃならない。 深遠なる闇を一閃の光が走る! 長門とアクリルさんが放つスターダストエクスプロージョン以上の威力が怪鳥群を殲滅し、しかし数が数であるし、しかも前の第一波と違い、今度はひっきりなしに増えてくる! さらには艦首超必殺撃滅砲はエネルギー充電砲撃だけあって連射が効かず、また他の武器も一時使用不能となるという欠点がある。 じゃあなぜ使わなきゃいけなかったかというと、完全に俺たちが取り囲まれたからだ。 もちろん、相手も艦首超必殺撃滅砲の後は戦艦が単なる鉄の棺桶と化すことを知っている。こっちの戦艦のダメージはほとんどその時に受けるものだ。 もっとも! 『グレイトフルサンライズフェニックス!』 遠距離怪光線攻撃ならともかく、その瞬間に肉弾で突っ込んでこようものなら長門とアクリルさんの餌食だ! 俺たちの前に飛び出してきた二人の放つ光の不死鳥の羽ばたきが、怪鳥をなぎ倒していく! しばし戦場が硬直。 「キョン、大丈夫……?」 「もちろんに決まってんだろ……」 「ふふ……そうね。でも、これが蒼葉さんの気持ちだったんだろうね……」 「ああ、なんとなくわかるさ。たった一人で戦うことがどれだけ辛かったか……」 おっと、俺たちが戦艦の中にいるんだからダメージはないだろう、などと思ったならちょっと甘いな。 先にも言ったが怪鳥は口から妙な飛び道具を撃ってくる上に数が半端なく多いんだ。 その衝撃が、当たり所が悪ければ、当然、かなり戦艦を揺らす訳で、何度か俺たちはバランスを崩し、椅子やパネルに叩きつけられたこともあった。それが幾度となく続けば当然、肉体へのダメージとなる訳で、もっともそんなことはどうでもいいんだがな。 この痛みを味あわないことには蒼葉さんに顔向けできないのは勿論、長門、古泉、朝比奈さん、アクリルさんとだって顔を合わせられん。 しかし、その硬直は一瞬、再び、怪鳥たちは四方八方から突撃を開始する! 「けど負けてらんないわよ!」 「だな!」 ハルヒと俺が吠えて再び迎撃を開始する! 機体はすでにあちこちから煙が上がり、きしむ音がまるで戦艦の苦痛の声のように聞こえるが、何、心配するな。逝くときは一緒だぜ! 「馬鹿言ってんじゃないわよ!」 「ハルヒ?」 「キョン! あたしはこんなところで死ぬ気なんてさらさらないんだからね! みんなで一緒に元の世界に戻るんだから! 負けるとか死ぬとかなんてまったく考えていないわ!」 ハルヒがいつの間に、俺に近づいてきていたのか、胸倉をつかみ俺を引きよせ、大きな漆黒の瞳にマジで怒気を孕ませて睨んでくる。 「いい? この戦艦は不沈艦よ! だって、あたしのものなんだから! んで、この船があたしたちを元の世界へと連れてってくれるの! だから沈むなんて表現、絶対に許さないわよ!」 ハルヒ…… 俺は一瞬、慄き、ハルヒを茫然と眺めたが―― 「だよな」 再び呟く俺のセリフにも力がこもっていた。 「お前の言う通りだ。俺たちはこんなところでくたばる訳にはいかんよな。なんせ元の世界でやり残したことがたくさんあるし、まだまだやりたいことがたくさんある」 「その通りよ!」 言い合って、俺たちは再び配置につく。 そして―― 『来ました! あたしの中ではちきれないばかりの何かを感じます!』 外部スピーカが拾ったのは朝比奈さんの声だ。 「ん! なら、みくるちゃん! 解っているわよね!」 『はい! ありがとうございます、みなさん!』 ハルヒの歓喜の声に、朝比奈さんが声を張り上げて、これまた歓喜されておられます! 『はぁ~~~』 外部モニターを怪鳥から朝比奈さんへと切り替える。そこでは、朝比奈さんが気合を入れ直して、しかもツイテンテールが揺らめき立っている。 ひょっとして、古泉の赤球がなければ、何か原色オーラでも立ち上っているのではなかろうか。 『ミクルミサァァァァァァァァァァイルっ!』 朝比奈さんが眼下に向けて両拳を突き出すと、確かに胸から猛スピードの閃光が放たれた! 光が大地の闇に飲まれるように消えてゆき、一瞬の静寂。 まさか失敗したのか―― などと考えようとした直前! 大地の闇から一気に光が放たれ、そしてその光が一気に放射された! と、同時に光が一瞬で世界を覆い、怪鳥の全てが飲み込まれ、俺たちの乗る戦艦も飲み込まれ、長門が、朝比奈さんが、その姿を北高セーラー服へと変化させられる! 風景が全てを震わせながら、あたかも突然大地が切り裂かれそこに全てが沈み込んでいくかのような地鳴りと轟音が響き、崩れていく! 俺はハルヒの手を取り抱きかかえるような形で、しかし、落下しない!? そうだ! そのまま宙に漂っている、そんな感じだ! 「やった……」 「ああ……」 俺の胸の中で茫然声を漏らしたハルヒに俺が同調すると、 「あたしたちの――勝ちよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 ハルヒがガッツポーズで勝利の雄叫びをあげたのである。 勝利の余韻に浸ることしばし。 気が付けば、長門が朝比奈さんが古泉が俺たちを囲んでいた。 「どうやら、これで終わりのようですね」 「そう。わたしたちの勝利」 「本当にありがとうございます。みなさんのおかげで今回はあたしも役に立てました」 「違うわよ、みくるちゃん。今回はあたしたちSOS団がみんな頑張ったから。みんながみんなにお礼を言うべきなのよ」 「だよな」 などと俺たちは談笑を交わしている。 世界の崩壊と供に、俺たちは元の世界に戻れることが解っている。 もっとも、この記憶は失くしたくないもんだ。なんたって本当の意味で俺たちは一つになったことを実感したわけだからな。 しかし、勝利の余韻と充実感を吹き飛ばすセリフが聞こえたのはこの時だった。 「突然だけどお別れの時がきたみたい」 え? 「さくら……さん?」 ただ一人、SOS団とは無関係のアクリルさんが切り出してきて、俺とハルヒが茫然とした声を漏らすが、彼女はどこか寂しげな、しかし吹っ切った笑顔を俺たちに向けていた。 「この世界が崩壊するということは、あたしたちは帰巣本能によって、それぞれの世界に強制的に帰されることになるの。これはどうしようもない決まり。だから、これであたしとはお別れ」 ――!! 「嘘……でしょ……?」 ハルヒが愕然とつぶやき、 「残念だけど本当」 アクリルさんはなんとも子供を宥める母親のような笑顔を向けていた。 ……まさか、あなたはそれを知っていたんじゃ……! もちろん、俺の声も震えている。 「だとしたら?」 今度はなんとも不敵な笑顔を浮かべてくれた。 が、 「なんてね。そんな訳ないでしょ。この世界に来ちゃったのはただの偶然。だいたい、明日も一緒に遊ぶ約束してたのに、わざわざ約束を破ってしまうような真似なんてするわけないじゃない。あなたたちに対しては、ね」 今度は茶目っ気な笑顔を向けてくれる。が、しかし、再び即座に神妙な笑顔になって、 「キョンくん、あたしが何のためにあなたたちの世界に来たかは言ったわよね?」 「ええ……それは、俺の前にこの世界に戻してもらった時の魔法で背負ってしまった後遺症を是正するために……って、ことで……」 「その通りよ。それを今から敢行するわ。幸い、何もしなくても、みんな、この空間から脱出すれば、今までのことは夢だと思ってしまうはずだから。だけどね、それをより確実なものにさせてもらう」 どういう意味……? 「夢は目が醒めたらほぼ記憶から消えてしまうもの。どんなに留めようと思っても、手のひらからこぼれる水のように塞き止めることはできない。そして、キョンくんの召喚術の後遺症はあたしに、ううん、あたしや蒼葉、そして向こうの世界に関するすべての記憶を消すことによって達成される。なぜなら召喚術の後遺症は記憶が媒体になっているから。ならその記憶を失くするしか、是正される方法はない」 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?! 「しかも都合がいいことに、今、この場に、あたしたちと関わった全員がそろっている。労せずして、みんなの記憶も一緒に抹消させることができる」 「んな!」「――っ!」「えっ!?」「……!」 もちろん、ハルヒ、古泉、朝比奈さんは驚きの声をあげ、長門もまた、漆黒の瞳を普段より二回りは大きく見開いている。 「楽しかったわよ。この世界の一日はね。でも夢の宴もこれでおしまい」 アクリルさんが左手の人差し指を天に向け、崩壊最中の世界の瓦礫がゆったりと空間を漂っている中、 「あたしがあなたたちの世界で魔法を披露したことを不思議に思わなかった? 正直言ってパニックを引き起こすことは想像出来てたわよ。なんせあたしが振るう力は未知の力だったことは前にあたしたちの世界に迷い込んだキョンくんの態度を見ていたから知ってたしね。でも、それは最初から記憶を消すつもりでいたから気を使わなかっただけよ」 ま、待ってくれ! さくらさん! 俺は、いや俺とハルヒはあなたたちのことを忘れたくない! 忘れちゃいけないんだ! だから! 「いいのよ、忘れても。だって、これでもう二度と会えなくなるんだから。ううん、あなたたちは会おうと思う気持ちすらなくなるんだから」 そうじゃない! 俺とハルヒはさくらさんたちの生きる世界を存亡の危機に立たせたんだ! その罪は背負って行かなくちゃいけない! それに! それに! 「お願いさくらさん! さくらさんたちのことをあたしたちの記憶から消さないで! せっかく出会えた異世界人の記憶を消したくない! それに……あたしはまだ……蒼葉さんに謝っていない!」 ハルヒも俺と同じで悲痛の叫びをあげている。 そうだ。俺たちは絶対にあの日の記憶をなくすわけにはいかないんだ! 「それもひっくるめて、よ。何を謝るのか知らないけど、あたしも蒼葉もあなたたちを恨んでなんかいない。感謝の意しか持っていないわ。だから気にする必要はないの。ついでに今のあなたたちの嘆き悲しむ記憶も消え失せるから問題ないわ」 アクリルさんがとびっきりの笑顔を向けてくる。 「もっとも正確には記憶を消す、じゃなくて、巻き戻す、だけどね。蒼葉とあなたたちが出会ったあの日まで。そして、今日までのことは、その日から、あたしたちと出会わなかった過程の記憶が書き込まれる。だから、もう、あたしたちのことは思い出さない」 それでもだ! あなたたちのことを忘れるくらいなら俺は今のままで構わない! 召喚術の後遺症も受け入れる! だから! 「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ」 「え……!」 アクリルさんの瞳には怒気が孕んでいた。 「いい、キョンくん。あたしたちのことを忘れることよりも召喚術の後遺症の方がはるかに大きな問題なのよ。前にも言ったけど、あなたはハルヒさんの下す命令には決して逆らえない。その意味が解らない?」 別に今までと変わる訳じゃない。俺はハルヒに巻き込まれ型の人間だ。今はそれで構わないとさえ思っている。 「違うわ。このことが分かったからあたしは、ううん。あたしと蒼葉はなんとか、キョンくんの元へと赴こうと決めたんだから」 アクリルさんがゆっくりかぶりを振り、そして俺に睨みつけるような厳しい視線を向けてくる。 もっとも、そこに敵意はない。むしろ、親や教師が俺を心配して、あえてぶつけてくる厳しい視線とそっくりだ。 「召喚術は元来、魔物を呼び出す魔法。魔物であれば頑丈だしある程度の無茶も可能。んで時が経てば、召喚の魔力を魔物が持つ魔力で食いつぶしてしまって召喚術の影響は解ける。でも、魔力を持たない『人』はそうはいかない。魔力同士の犇めき合いが存在しないから死ぬまで解けることがない」 一生、この後遺症を背負うってことですか? 「そういうこと。そしてもう一度言うけど、キョンくんはハルヒさんの下す命令には逆らえない。必ず実行してしまうの。どんな命令であったとしても」 だから、あなたたちのことを忘れてしまうくらいなら、俺は一生、ハルヒの尻に敷かれようが構わないって…… 「――それは、たとえば涼宮さんが冗談でも「死んで」とか言ってしまうと――ということですね――」 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?! 古泉の神妙な一言がアクリルさん以外の俺たち全員を凍り付かせる。 「その通りよ。別にそこまでストレートじゃなくても、身体の限界を超えるようなことを言ってしまうだけで同じ結果を招くわ。だからこそ、あたしは召喚術の後遺症を消さなきゃいけないと考えた。 なんたってキョンくんにはあたしたちの世界を救ってもらった文字通り世界にとっての命の恩人だから。そんな人の命を、あたしたちの所為で危険に晒すなんて恩を仇で返すような真似、できないわよ。 前に言った『時間制限がない訳じゃないけど』というのはそういう意味。今この時でさえ、キョンくんには危険が迫っていないとは言えないということ。住む世界が違うから確認できるわけじゃないけど見て見ない振りをするなんて卑怯な真似をするつもりもない」 俺は絶句するしかできない。 こんな選択が存在するのか? 忘れちゃいけない人たちのことを忘れてしまうか、ふとしたことで命を危険に晒してしまう後遺症を持つか、なんて…… というか、こんな選択を聞いたら誰だって後者を選ぶよな…… 「だめだから! 絶対にだめなんだから! あたしはそんな無茶をキョンに言わない! これからずっと一生! だから!」 ハルヒが泣き叫んでアクリルさんに言い募る。 そうだ! ハルヒが無茶さえ言わなければ問題ないじゃないか! だったら無理に記憶を消す必要はないはずだ! 「無理よ。なぜなら、『無茶を言っている、という意識がないまま言う』場合が必ず存在するから」 ――!! ハルヒがよく言う「三十秒以内」ってのがそれに当たる。それは口癖ってやつだ。だから直せない…… 「理解した? ならもう異議はないわよね。自分の命とあたしたちの記憶。天秤にかければどっちが大切かは火を見るより明らかよ」 違う! あなたの言葉を借りるなら、俺は、あの時、二者択一しかなかったはずなのに、ハルヒもそっちの世界も救う選択ができた! だったら、まだ何か方法があるはずだ! あなたたちのことを忘れず、そして、召喚術の後遺症を消す方法が! 「残念だけど、それを考える時間は存在しないわ。だって、もうこの世界が無くなっちゃうから、あたしたちは自分の世界に強制送還させられる。そして異世界間移動に確実性がないことは説明したわよね? 唯一確率が高い方法だった今回にしたって、あたしや蒼葉は何度もこの世界の平行世界へ行ってしまっている。つまり、次に、あたしが、絶対にあなたたちの元に行けるという確証は存在しないし、あなたたちはまだ異世界間移動を身に付けていない。だから、この機会は絶対に逃すわけにはいかない」 あ……! 「さようなら――今度こそ本当に、ね――」 アクリルさんがこの場に似つかわしくない、あの日、消滅していく朝倉涼子が見せたような無邪気な笑顔を浮かべて、 だめだ! やめてくれアクリルさん! 「メモリーリウィンド」 静かに呟くと同時に、その左手人差し指から柔らかな光が発せられる。 その光は俺たち全員を呑み込み―― 気が付けば、いつも見慣れた自室の天井が見えた―― 涼宮ハルヒの遡及ⅩⅢ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6524.html
涼宮ハルヒの遡及Ⅰ 『ただの人間には興味ありません。この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい』 と、高校入学の初顔合わせの自己紹介の場で、至極真剣な表情でのたまった女がいたとするならば、たとえ、そいつがどんなに可愛くてスタイルが良かろうとも、大多数の男はコナをかけるのに二の足どころか三の足、四の足を踏む……いや、それ以前に、決して関わらないようにしよう、と心に固く誓うことだろう。 むろん、俺もそうだった。いや、そのはずだったんだが…… 「こらキョン! あんた聞いてるの? 今、大事な話をしてるところなのよ!」 「心配するな。ちゃんと聞いている。明日の不思議探索パトロールのことだろ」 「そうよ。で、あたしが何て言ったのかも聞いてたの?」 それはまだだろ。と言うか、それを今から言う気だったろうが。 「あら、ちゃんと聞いていたのね。意外だわ。なんとなく失礼なモノローグを頭の中に流しているように見えたから聞いてないかと思ってた」 む……なかなか鋭い奴だ…… 「んじゃまあ続きだけど」 気を取り直したハルヒが再び勝気満面の笑顔に戻って、 「明日の不思議探索のテーマはUMAと心霊現象よ! と言う訳で、午前9時にいつもの駅前集合ね!」 んまあ、関わっちまったもんは仕方がない。などと開き直っている俺がいる。 あの十二月の出来事で俺は自分の気持ちに気づいてしまったんだ。冒頭のような感想を持っていた入学当時の俺が今の俺を見たら何と言うのか、なかなか興味深いことでもあるのだが、今の俺から言わせれば当時の俺なんざつまらない奴に映ってしまうだろうから、人間、変われば変わるものだと妙にしみじみしてしまう。それはハルヒにも言えることだし、長門、古泉、朝比奈さんも同じだな。みんなSOS団発足当時と比べれば明らかに変わったと言っても過言ではないだろう。 ん? ああ、ハルヒが何で宇宙人、未来人、異世界人、超能力者って言わなかったか、ってことか? そりゃそうだろ。 なんたってハルヒはもう、俺たちの正体を知ってしまったからだ。 長門が宇宙人、朝比奈さんが未来人、古泉が超能力者で、自分に新しい世界を創造できる力があるということをな。知らないことと言えばハルヒは自分が想像したことを現実化できる力を持っている、てことくらいだ。 むろん、俺がジョン・スミスだということも知っている。もっともだからと言って俺たちの関係が変わる訳じゃない。 むしろ、ハルヒが望んでいたのはこういう団体なんだから最近は機嫌が最高潮にいい日しかないくらいだ。 さらに加えるなら、ハルヒは異世界人との邂逅も果たしている。 ただ、異世界人は少し勝手が違っていて、この世界の存在ではないだけに、ハルヒが望んでもハルヒの力の影響を全く受けないものだから、そうそう出会えるものではないらしい。なんたってハルヒもこの世界の存在だからな。てことはこの世界じゃない世界まではその力が及ばないって訳だ。 とと、話を戻すが、どうして今だに不思議探索なんぞをやっているかと言えば、ハルヒの不思議への欲求が目的対象を見つけたからと言って、それで弱くなることはないからだ。見つけたなら次の不思議へと突っ走る奴だしな。 だから探索目標が変わったのさ。 ところがだ。 ハルヒの夢が叶った現実を快く思わない人間というものもいるんだよな。 ……いや違うな…… その人たちは別段、ハルヒを悲しませようとか困らせようとかなんて微塵も思わなかったはずだ。それは断言してもいい。 ただ、都合が悪かったんだろう。自分たちにとってではなく、少なくともハルヒと俺にとっては……いや、もしかしたらSOS団にとってもか? だからこそ、心を鬼にせざる得なかったんだろうな。 俺は今、心からそう思う。 てな訳で、話は今回の不思議探索パトロール当日の午前七時半ぐらいから始まるだろうか。 いきなりで申し訳ないが、ちょうど着替えが終わった俺は目を丸くして口をぽかんと開けて絶句した。 「さて、質問があるけどいいかしら?」 なぜなら、俺の目の前には見覚えはあるのだが、もう二度と会えないと思っていた人物が、文字通り、突然、現れたから。 癖っ毛でやわらかそうな腰まで届こうかという頭髪を、一度、さらりと掻きあげて、 「あなたはあたしの知ってるキョンくん、よね?」 「ア……アクリルさん!?」 艶やかな髪をふわりと揺らす彼女を俺は見紛うはずがなかった。 「ふぅ、よかった。今度こそ蒼葉(あおば)の補正がうまくいったみたい。やっと、ちゃんと目的地に着いたのね」 苦笑とも自嘲ともとれる笑顔を浮かべる彼女を俺は忘れるはずがない。 容姿端麗、プロポーション抜群、山吹色のノースリーブシャツに、スカイブルーのホットパンツ、までならなんとも艶めかしい姿を想像できても、ヘアカラーが桃色でマントを羽織ってた日にゃ、コスプレ会場以外であれば絶対に頭を疑われるような風体だったりすることだろう。 しかし、あくまでそれはこの世界で、のことだ。 本来、彼女が住む世界ではそこまでの違和感はないはずである。 なぜならば。 この人は異世界に生きる魔法使いだからだ。 言っておくが嘘でも冗談でもないぞ。 彼女が出した名前、蒼葉さんとは、ハルヒの創り出した閉鎖空間で出会い、その後、俺がハルヒに関わってしまったばっかりに得体のしれない存在に目を付けられて蒼葉さんと彼女が住む世界に飛ばされてしまったことがあったんだ。その時は、ハルヒ、長門、朝比奈さん、古泉の尽力と蒼葉さんとこの御方の協力で俺を元の世界に戻してくれたのである。その時に使用したのが『魔法』だったし、俺は彼女が魔法を振るう姿もこの目でしかと見た。 だから間違いない。 しかし、彼女たちは言ったはずである。自分たちと俺たちが再会する可能性は皆無に等しいと。 なら、どうして今ここに現れた? 「はい、モノローグ説明ごくろうさん。オリジナルキャラクター登場シリーズでしかも連作っぽいから色々と面倒なのよね」 「いや、それは言ったら身も蓋もないと思うのですが?」 「仕方ないでしょ。あなたは大丈夫でも、オリジナルキャラクターを快く思わない人も決して少なくないみたいで、賛否両論。しかも両極端だし……って、いつまでもこの話題で引っ張るわけにもいかないわ」 それもそうですね。んじゃまあ話を戻しますけど、 「どうしてアクリルさんがこの世界に……?」 当然の疑問をぶつける俺。 「うん。ちょっと困ったことが分かったんでどうしてもこっちに来なきゃいけなくなったのよ。なかなか大変だったけどね。ここに着くまでに何度別の並行世界に辿り着いてしまったことか……まあ何にせよ、ようやくうまくいって良かったわ」 困ったこと? 「覚えてる? キョンくんをこっちの世界に戻すときに話した後遺症のこと」 「ああ……あれですか……」 俺は思わず苦虫をつぶした顔をした。 それは仕方がない話で、蒼葉さんとアクリルさんが俺をこっちの世界に戻す際に使った魔法、まあ、それしかなかった訳だから仕方ないっちゃ仕方ないことではあるのだが、その魔法=召喚術の影響で俺はハルヒと、そして今は長門にも絶対服従の責務を背負ってしまっているのである。その所為で毎日、どうにも苦労が絶えないんだ。なんせあの二人にまったく逆らえなくなってしまったわけだからな。どんな無茶でも聞いてしまっている俺が忌々しい。何度か本気でこの世界に戻って来なければ良かった、なんて考えてしまったほどだ。 そんな俺の表情が目に入ったアクリルさんがウインクをしつつの笑顔で続ける。 「それを是正しに来たのよ」 って、なんですと!? むろん、俺は驚嘆と希望で、比喩表現ではあるが胸が朝比奈さん並に膨らんだ気がしたぞ。 「で、何でこんな格好しなきゃいけないの?」 「ええっと……アクリルさん、ご自身の姿形をちゃんと自覚していますよね……?」 ここはアクリルさんが本来住んでいる世界ではない。 桃色の髪もマントも肩当ても標準装備のはずがない。ならばこっちの世界の流儀に合わせてもらわないと後々面倒なことになる。 しかも、このアクリルさんから「今回は別に慌てる必要がないから、少しこの街だけでいいんでこっちの世界を案内して」とせがまれたのである。 理由か? んなもん決まっている。ただの好奇心だ。 というか、俺だってもし、絶対に元の世界に戻れる保証があるなら、アクリルさんの住む世界を案内してほしいと思うことだろう。 それだけ『異世界探検』という行為は胸を躍らせるものだ。それはアクリルさんも同じなんだ。 しかしだからと言って事情を知っていれば『異世界人スタイル』で割り切れるだろうが、圧倒的大多数の事情を知らない人間が見ればアクリルさんは異様な姿にしか映らないことだけは確かなんだ。しかも案内を頼まれたということは俺はご一緒しなければならず、万が一、SOS団以外の知り合いに見られてしまえば、次回の登校からは疎外感たっぷりの視線に晒されるであろうことは想像に難くないんだ。一応は社会性を大事にしたい俺としては、それは是が非でも避けたいので変装をお願いしたのである。 という端的な説明をアクリルさんにはもっと丁寧かつ慎重に伝えた。 「分かったわよ。なら仕方ないわね」 ふぅ、どうやら理解してくれたようだ。証拠に彼女は髪を黒く染め、黒のカラーコンタクトを嵌めている。 「……別にあたしはどっちでも構わないんだけど」 ん? 何か言いました? 「ああ、聞こえても聞こえてなくても大丈夫よ。大した話じゃないから」 そうですか。 おっと、それとアクリルさんって呼び方も変えていいですか? 「何で?」 「蒼葉さんなら違和感ないんですけど、この世界、と言うよりこの国ではカタカナ名前はまだまだ稀なんです。怪しまれないためにも別の呼称の方がいいかと」 「ううん……そんな大袈裟なことでもないと思うんだけどなぁ……だいたいキョンくんだってカタカナ名前じゃない」 大袈裟なことになります! その髪の色と名前は明らかに不自然なんですから! あと俺は本名じゃなくてニックネーム! 「ふうん、そうなんだ。でもまあ郷に入っては郷に従え、ね。キョンくんの提案を受け入れましょうか。で、あたしのこと、何て呼ぶことにするの? あ、キョンくんの本名はいいわ。覚えても多分、今回の任務を終えて向こうの世界に戻ってしまえば、もう会えない可能性の方が圧倒的に高いし」 なんかアクリルさんの態度がどうにも釈然としないんだがまあいいとしよう。 世界が違うんだから常識が違うのかもしれん。 って、向こうの世界にも『郷に入っては郷に従え』なんて言葉があるんだな。 「そうですね。『さくら』さん、というのはどうでしょう? この国の代表的な花でみんなに愛されています」 「なるほど。その花の色が桃色な訳か」 ぎく。 「気にしなくていいわよ。別に怒ってないから。そもそも向こうの世界でもあたしの一番の特徴はこの髪の色なんだから今さらってやつよ」 その割には少し目が怖いような…… あっそうか。そりゃそうだよな。俺だって慣れてしまっているところはあるが『キョン』って呼ばれるのはあまりいい気しないもんな。それと同じだ。 「何か思い当るところがあるみたいね。ま、いいけど。ところでとりあえず今日はこっちの指定で案内してもらえないかしら?」 「え? どこに?」 「んと……前にキョンくんが魔石を通じて交信していた相手で、あたしからは顔とかはよく見えなかったんだけどキョンくんと抱き合ってた女の子が居るところ……名前なんだっけ?」 だ、抱き……!? 「そ。あの女の子の名前」 …… …… …… 『抱き合っていた』はスルーですかーそうですかー。 「どんなツッコミを期待していた訳?」 い、いえ……別にそう言う訳では……!? 「だったらあの子の名前教えて。もう会うことない、って思ったから覚えてないのよ」 そう言えば蒼葉さんも同じようなことを言ってたな…… 「ハルヒです。あ、そう言えば今から集合なんですけどアクリ……じゃなかった、さくらさんもご一緒にどうです?」 「ん? お邪魔じゃないの?」 「いや……そういうんじゃないんで……その……他のツレもいますから……」 「なんだ。みんなで遊びに行くってやつか」 「まあ……似たようなものです……」 俺は苦笑を浮かべるしかない。遊びに行くことで間違いはないのだろうが、普通の高校生がやるような遊びじゃないしな。 「んじゃあ早速、行くわよ」 「へ?」 そんな俺の心の内を知らないアクリルさんは俺の手を取って、窓を開けた。 って、まさか! 「集合場所までの案内よろしく!」 満面の笑顔を浮かべて、アクリルさんは開け放した窓から飛び出した。 「レビテーション!」 真っ青に晴れ渡った空の下へと、俺たちは舞い上がったのである! つか怖っ! 速っ! て、手を離さないで下さいね! ね! 涼宮ハルヒの遡及Ⅱ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/23.html
ハルヒ「なっなによこれ!」 ハルヒが目を覚ますと目の前は真っ暗だった 目隠しの黒布がハルヒの視界を妨げていたからだ それだけではない 手は後手に、足はM字開脚の形で縛られている おまけにハルヒは気付いていないが服装は体操服にブルマ姿だ 「誰よっ外しなさいよ!!」 叫んでも人が来る気配はない 疲れた。お腹もすいた。そして膀胱の方にも水分が… ハルヒはだんだん声を出さなくなった こんな姿を誰かに、とくにSOS団の仲間に見られたら… でもずっとこのままなのはいや… 古泉「変ですね…」 キョン「どうしたんだ、いきなり」 古泉「閉鎖空間が発生しました…しかし、どうやらいつものものとは様子が違うようだ」 キョン「それは…この世界の危機ってことなのか?」 古泉「いえ…はっきりとは分かりませんが、そういうわけではないようです」 キョン「どういうことだ。わかりやすく説明しろ」 古泉「すみません、僕にもよく分からないんですよ。とにかく、僕は今からアルバイトです」 キョン「おい、…俺も、連れて行け」 俺は舌打ちをした 肝心な時、頼りになる長門はいない そもそも古泉がその違和感を感じたのは俺と二人になった帰りの電車の中だ 「やはり変です…」 「だから何がだ。主語を先に言え」 俺の苛立った声に古泉はまたすみませんと言って少し微笑んだ 場を和ませるつもりで笑ったのか、癖なのかは知らんが俺はそれにまた苛立ちを覚えた 「閉鎖空間の入口が確認できません」 「なんだって?」 「…今までこのようなことは経験したことがありません。……異常事態とでも言いましょうか。」 古泉もその小綺麗な顔から笑顔を消した その顔は俺には必死に言葉を探してるように見えた 「……涼宮さんの精神が不安定な状態にあるのは確かです。ただ、この世界に直接影響があるわけではない……です、だから、僕には閉鎖空間の入口が確認できません」 ラッシュ時間でもない、電車が通り過ぎたあとの閑散とした駅のホームで俺たちは夏でもないのにやたらと汗をかいていた 今日はSOS団の活動はなかった ハルヒの姿も見ていない。ハルヒは欠席だったから めずらしいなと思ったが大して気にとめなかった しかしハルヒの家に連絡すると今朝確かに家を出たという 俺は古泉を連れて学校に戻った 俺はもうすぐ下校時間になろうかという校舎内を古泉と探し回った ハルヒの携帯はまったく応答がない もう時間がない 校舎のはずれの普段は使われていない第二実験室、鍵がかかっていないことを不審がる暇もなく俺は扉を開けた そこには、縛られた体操服姿のハルヒが、 「だっ、誰よ、誰なのっ」 ほこり臭い部屋の机の上、がくがく震えているそいつをやっと見つけ 俺がまさに声をかけようとしたときだ 「やだっ、いやぁ…いやあああ見ないでえええ!!」 ハルヒの盛大な放尿ショーだった びくびくしながら尿は音を立てて板張りの床を打つ うっすらほこりの積もった床の色を変えてゆく 思わず、俺はその場に立ち尽くしていた 「ハルヒ!」 我に返って駆け寄ったときにはハルヒは失神していた とにかく腕やらを縛る紐を解いてやる 扉の音と足音に振り向くと反対側を探していた古泉、そして長門も一緒だ 「…閉鎖空間は解除されました。……おそらく、これが彼女の望んだ…」 古泉が手で口元を押さえてうつむく 「……長門」 俺の言葉に長門は無言で頷いた 「…涼宮ハルヒ」 ぽつりと呟いた長門の言葉は俺にも古泉にも、もちろんハルヒにも届かなかった 終わり ハルヒ「キョン、……しないと死刑よ!」 みくる「私も死刑でお願いします!」 古泉「僕も!僕も!」 鶴屋「私もにょろ~!」 長門「私も」 ハルヒ「じゃ、じゃあ……私も」 キョン「よし、お前死刑な」 ハルヒ「二班に分かれるからクジ引いて頂戴!」 …… ハルヒ「あ、私は印入り」 キョン「無印だな」 古泉「無印のようです」 長門「無印」 みくる「無印です」 ハルヒ「……え?……あれ?」 キ・古・長・み「では、そういうことで」 ガタッ ハルヒ「ちょ……何よこの展開……あれ……涙が……」 「ねえ、みんな最近不思議な事件とか見つけた?」 「………無い。」 「残念ながら僕も見つけられていません、努力はしているはずなんですがね。」 「ホントにぃ?ちゃんと探せばきっとそこら辺に転がってるはずよ。」 「謎がそこらへんに転がってりゃ今まで苦労はしてないぞ、ハルヒ」 「うっさいわね、雑用の癖にー。」 「あ、そういえば私今日こんなこと聞きましたぁ」 「え?なになにみくるちゃん?」 ハルヒ「………」 ハルヒ「なに一人でやってんだろ私」 ハルヒ「みんながこなくなってから約一ヶ月か……」 ハルヒ「………寂しいよみんな。」 ハルヒ「今日は私の誕生日よっ!!さぁ、祝いなさいっ!」 キョン「はあ、結構期待してたのにな…お前にはガッカリだよ。じゃあな」 ハルヒ「へ?」 古泉「どうやら僕は涼宮さんを買い被っていたようですね。では行きましょう朝比奈さん」 みくる「う、うん」 ハルヒ「ちょ、ちょっと…」 長門「私は…」 ハルヒ「有希…」 長門「今日という日を楽しみにしていた。期待外れ。帰る」 ハルヒ「あ…」 ハルヒ「なによなによなによみんなしてっ!エイプリルフールが誕生日じゃ悪いって言うのっ!? バカー!」 ウワァァン ハ「ポケモンするわよ~」 キ「古っ」 み「今時でですか!?」 有「今はムシキングの時代」 ハ「みんなっひどい・・・」 ハルヒはそういい残すと涙を隠しながら部室から逃げるように出て行った キ「いやぁポケモンしてるの気づかれなくてよかったよ」 み「本当です」 有「・・・」 キ「ばれたら俺のパーティ全体マダツボミにされちまうぜ」 み「涼宮さんが持っていたの赤っぽかったですけどね~」 キ「ええ」 キ「え?」 「この中に、宇宙人、未来人、異世界人、 超能力者などがいたら私のところに来なさい 以上」 何を言ってるんだこいつは 「宇宙人なんていない」 長門・・・ 「未来人なんていません そんなのただの妄想にすぎません」 朝比奈さん・・・ 「超能力者?寝言は寝てから言ってください」 古泉・・・ 「う・・・みんな・・・信じてないわけ?・・・いいよもう・・・うぅ・・・」 古泉「過疎ですね…ここは一つ、スレを盛り上げるという名目でSSでも書きませんか?」 キョン「俺はハルヒが拉致られて無理矢理獣姦させられる物語を所望する」 みくる「わ、私は涼宮さんが大学生グループに輪姦される話がいいと思いまーしゅっ!」 長門「変態にダルマにされ、調教される涼宮ハルヒの物語が読みたい」 ハルヒ「あんたら私になんか恨みでもあるの?」 そりゃあ、もう ハ「野球するわよ~」 キ「嫌だ」 み「嫌です」 長「嫌」 古「それはちょっと断らせて・・・」 ハ「古泉君だけ賛成ね みんなSOS団員という自覚が足りないんじゃないの?」 ハ「今日は私の誕生日よ 祝いなさい」 キ「嫌だな」 み「それはちょっと・・・」 長「嫌」 古「僕の意見としても個人を祝うのは・・・」 ハ「古泉君だけしか祝ってくれないわけ?」 ハ「はぁ・・・やっぱり古泉くんだけしか頼りに出来ないわ」 古「ははは 僕はメス豚には興味ありませんよ」 ピルピルピルピピルピー♪ キョン「お、ハルヒからメールか」 From ハルヒ Sub 無題 本文 助けて殺されちゃ( _ ) キョン「うぜっ、『迷惑メールすんなっ!』と…送信」 続く デーデーデーディードードーディードー♪ みくる「チッ、誰だよこんな時間に…げっ、涼宮じゃん!」 From ハルヒ Sub 無題 本文 SOS! みくる「うぜぇっ!!はいはい『団』とでも答えればいんだろうがよぉ!意味わかんねぇよ糞ビッチが!死ねっ!…送信」 続く ブルルルルル♪ 長門「メール」 From ハルヒ Sub 無題 本文 ナニちけτぇー(uдu) 長門「涼宮ハルヒ…」 長門「涼子ぉ、メールきたー」 朝倉「はいはい、あんたもメールくらい自分で打てるようにならなきゃダメよ?」 長門「うん」 朝倉「……『ヤッポー(^∀^)ノシ ユッキーナニ゙よ。メールありがとね(はぁと×7)よくわからなL1けどくU゙けナニらナニ゙よ(*^v^*)b』…送信。」 続く ハルヒ「なんで誰も助けに来てくれないのよぉ!」 古泉「もう理解出来たでしょう?誰もあなたを必要としていないのですよ。もちろん、僕達も…」 ハルヒ「そ、そんなことないっ!そうだ、鶴屋さんなら…」 古泉「アドレス知っているのですか?」 ハルヒ「う……じゃ、じゃあ阪中さんに…」 古泉「アドレス知っているのですか?」 ハルヒ「………」 古泉「誰もあなたを助けに来ませんよ。皆、あなたの被害者なのですから…」 ハルヒ「なによそれ……全然意味分かんないっ!」 古泉「あなたも…変な力を持たなければ…普通に生きて行けたでしょうに……残念ですがこれが《機関》の総意ですので、さようなら涼宮さん」 ハルヒ「待って行かないで!出してよ!ここから出してっ!」 古泉「………やれ」 新川「………はい」 ハルヒ「いやあああぁぁぁぁ!!!!」 私はSOS団恒例の不思議探索の待ち合わせ場所でみんなを待っていたら 「ちょっとみんな遅れるからそこで待ってて」 「みんなってなによ?みんなキョンと一緒にいるの?」 「詳しくは後で話すからとりあえずそこで待っててくれ」 「あっ!ちょっと待ちな…………切れた」 キョンからこんな電話がきた。みんなで私を待たせるなんてどういう気かしら? ……もしかしてサプライズパーティ?みんな今日が私の誕生日なの覚えててくれたのかしら? と、ワクテカしながらみんなを待ってた。 翌日 「30分待っても来ないから先に帰っちゃったわよ」 と、私が言うとみんなは口を揃えて 「なんだよ。あと5分も待っててくれれば着いたのに」 …オカシイよね。三時間も待ってたのに。 ハルヒ「誰……? 正直に言いなさい……今ならまだ許してあげるわ……」 キョン「……」 長門「……」 みくる「……」 古泉「……」 ハルヒ「……誰かがやらなきゃこんなのここにあるわけないじゃない……往生際が悪いわね……」 キョン「……」 長門「……」 みくる「……」 古泉「……」 ハルヒ「……もういいわ!! みんな見損なったわ!! ……こんな子供みたいなことして……」 キョン「……」 長門「……」 みくる「……」 古泉「……」 ハルヒ「……部活の邪魔ね! 片付けなきゃ……!」 そう言ってハルヒは団長机に盛られた特大の糞を片づけ始めた。 ガチャ ハルヒ「やっほ……って誰もいないわね…… ……? ……このお茶は……?」 ハルヒ「みくるちゃん一回来たのかしら……? まあいっか、頂いちゃお」 ゴクゴク ガチャ! ダダッ キョン「ハルヒ! お前そのお茶を飲んだのか!?」 ハルヒ「え……ええ……なに……? なにかしたの?」 長門「そのお茶には……何者かが入れた猛毒が……」 ハルヒ「え……ええっ……!!? ちょっとちょっと……嘘よ! 嘘でしょ!?」 キョン「ハルヒ、腹を出せ!! まだ間に合うかもしれない……オラァァァ!」 ボグッ ハルヒ「ウァ…アガァ……キ……キョン……!? なに……を……?」 キョン「いいから腹を出せ!! 今なら殴れば逆流して吐かせられる!」 みくる「涼宮さん! このままじゃ死んじゃいますよ! 早くお腹を出して下さい……!!」 ボグッボグッ ハルヒ「ウグッ!! オエッ!!」 ゲロゲロ キョン「あっ……よかった、吐いたな危なかった……! ハルヒ大丈夫か……!?」 ハルヒ「うっ……ううううっ……お腹痛いよ……キョン……」 キョン「ソファで安静にして待ってろハルヒ! 俺達はお茶に毒を入れたやつを探してくる!」 ガチャ バタン! ハルヒ「ううっ……痛いけど……キョン……ありがと……」 キョン「いやぁ、流石長門だな。こんなストラト解消法なんて考えもしなかったぞ」 みくる「慌てたりお腹痛そうにしてたのがもう、すっとしましたねぇ!」 長門「……これぞ最強のいじめ……」 祇園精舎の鐘の声、諸行無常のハルヒあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。 おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。 キョン「ということで、おまえは塵だ、ハルヒ」 みくる「ばいばいき~ん」 古泉「去ね去ね!」 長門「・・・やれやれ」 ハルヒ(´・ω・`) キョン「だいたい、ハルヒに気に入られたからといって、罰金だの死刑だの、 知ったことではないんだが・・・」 長門「私の任務は観察であって、世界が崩壊したとしても不都合はない」 古泉「そういえばそうですね。僕もキャラ作りに疲れました。 あなたとゲームをする以外に楽しみもありませんでしたし」 キョン「俺はSOS団なんてわけのわからん組織はやめて、普通に生きていくことにする。」 古泉や長門と遊ぶのは学校帰りでもいいんだし」 みくる「そんな~,わたしが困りましゅ~」 長門「黙れ、雌犬・・・」 古泉「乳揉ませろや、このポンコツ」 キョン「確かに、朝比奈さんはおかず以外には役に立たないな」 みくる ( ´・ω・) ハルヒ「やっほー、全員そろってるわね」 キ・古・長・み「お前は引っ込んでろ」 ハルヒ (´;ω;`) 鶴屋「めがっさにょろーん!!」 キョン「うるさい」 ハルヒ「そうよ!そうよ!あんたうるさいのよ!」 鶴屋「にょろ~ん…」 キョン「うるさい黙れ」 ハルヒ「そうよ!お黙りなさいよ!!」 キョン「お前に言ってんだよバカ!鶴屋さんの声が聞こえないだろ!!」 ハルヒ「( ´・ω・`)アレ~?」 ガチャッ キョン「うぃっす」 ハルヒ「遅いじゃない」 中に居たのはハルヒだけだった、そうかじゃあ帰るか ハルヒ「ぐおしゅ!!ま、待て!待ちなさい!」 キョン「なんだよ!俺になんか用か?」 ハルヒ「いやだってさ…その…部活していきなさいよ!SOS団でしょ!」 キョン「そんな言葉で俺が買えるとでも?」 ハルヒ「いや買うって…じゃあ値段は体で払うわ♪」 キョン「お疲れ様でしたー、鍵は閉めて帰れよ」 ハルヒ「……」 「うう、寒い。今日はまた一段と寒いなぁ。今日の最高気温10度だってよ。風邪ひいちまうぜ。」 バサッ 「?...毛布?」 「別にあんたのためにかけてあげたんじゃないんだからねっ!」 「ハルヒ、ツンデレはもう時代遅れだ。さっさと消えろ。」 「うっ...。」 「泣くんじゃねえよ。キモい。」 ハルヒ「ちょっとキョン大変よ!」 キョン「なんだ、うるさいな」 ハルヒ「っ!…うるさいですって!……まあ、いいわ。それより部室がなくなっちゃったのよ! きっと生徒会のやつらよ!」 キョン「それがどうしたんだ?」 ハルヒ「え?」 キョン「要件はそれだけか?じゃあ、俺は長門たちと遊ぶ約束があるから行くぞ」 ハルヒ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!SOS団の危機なのよ。どうにかしようと思わないわけ?」 キョン「思わないね。元々、俺たちはお前が勝手に始めたことに無理やり付き合わされてきただけだからな」 ハルヒ「な」 キョン「部室が没収されたのだって長門が文芸部を退部して廃部になったからだ。終わりだな?俺は行くからな」 ハルヒ「ちょ……キョン… 行っちゃった……なんでよ…… キョン「あ、そうそう」 ハルヒ「キョン!?(戻ってきてくれた!)」 キョン「お前、後からついてくるんじゃないぞ。さめるからな」 ハルヒ「………」 キョン「朝比奈さんがハルヒと接触したということは、既定事項が成り立っていないんじゃないですか」 みくる「!! そうでしゅね。キ、キョン君、私と付き合ってください」 キョン「もちろんですよ」 キョン「ということで、朝比奈さんと付き合うことになった」 ハルヒ「団内で恋愛なんて認められないわ」 キョン「じゃあ、やめさせてもらう」 古泉「僕と長門さんもやめなくてはなりませんね」 長門「・・・そう」 キョン「じゃあ、帰るか」 古泉「そうしましょう」 ハルヒ「ちょっとみんな、待ちなさい」 みくる「もてない人は悲しいですね~」 長門「いつまでも電波ばかり発しているからもてないことに気付くべき」 ハルヒ (´・ω・`)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2663.html
放課後部室で俺と古泉がオセロをし、長門が窓際で読書、 朝比奈さんがお茶の用意をしていると俺より先に教室を出たはずのハルヒが ドアから勢い良く登場した。そのままズカズカと入り込んで団長席に腰掛けると、 ぐるっと椅子を回して古泉に視線を向けた。 ハルヒの表情は新しい獲物を見つけたようにギラギラと輝いている。 あー嫌な予感がする。 「ねぇ古泉くん、土曜日川岸近くの遊歩道で一緒に歩いてた子って誰? 手繋いでたみたいだったけど、ひょっとして彼女?」 土曜日っていうと俺が古泉に頼まれて彼方此方振り回されてた日だな。 女になってショッピングしたり、昼飯食べたり、 狙撃されて逃げ回ったりと散々な目に遭った。 遊歩道ではクレープを食ったりしたな。食べ終わる前に襲撃されて、 古泉が慌てて俺の手を掴んで――ってソレ俺じゃねーか! 「御覧になっていたのですか」 少し驚いた顔をしてハルヒを見る古泉。 そりゃそうだな。俺達が狙われる原因であるハルヒが傍にいたんだから。 ん、待てよ。連中はもしかしてハルヒがいたから古泉を狙ったのか? 「ちらっと見かけただけよ。 なんか急いでるみたいで、すぐ二人ともいなくなっちゃったから。 で、どうなの? もしかして彼女って北高の生徒だったりしない?」 ハルヒも女の子らしく恋バナが好きなんだな。少し意外だ。 恋愛は精神病の一種なんて言ってたくせに、他人の恋愛には興味あるのか。 古泉はこのルックスだし、浮いた話が1つや2つあってもおかしくはないが。 「彼女はこの学校の転校生になるはずだった生徒です。 制服も購入して先日から学校に来る予定でしたが、 不幸にも地方に住んでおられるご両親が体調を崩されてしまい、 通学が困難となってしまった為に決まっていた入学を取り消されたのです」 は? 突然何言い出すんだコイツ。 それは対ハルヒ用に用意していたシナリオなのか。随分と用意がいい事だな。 「それは可哀想ね。でもその子に兄弟とか親戚はいないの?」 ハルヒが食いついてきたのをいい事に、演技がかった仕草で古泉は話を続ける。 「彼女は年の離れた妹さんがいらっしゃるそうです。 親戚の方々は相次いで亡くなられておりまして、 両親と妹さんの面倒を見るのは彼女しかいないのです」 ふぅと肩を落として落胆の意を魅せるところまで完璧だ。 釣られたハルヒは友達のように心配した表情を見せる。 「じゃあその子はお世話をするために転入を諦めたってこと? なんだか理不尽な気もするけど仕方ないわね。 でもなんで土曜日は一緒にいたの? ってか古泉君とどんな関係?」 それは俺も聞きたい。 「ちょっとした昔馴染みですよ。なにぶん急な出来事だったので 荷物やら全部こちらに置きっぱなしのままだったそうで、 土曜日に引越し手続きをするために戻ってきてたんです。 あの時は久々の再会でしたから昔語りをしながら散歩をしてたんですよ」 昔馴染みねぇ。彼女って言われるのは御免被りたいが ちょっとだけ残念だと思うのは俺の気のせいだな。うんそうだな。 「ふ~ん、それにしても可愛い子だったわね。 そうそう、ポニーテールがすっごく似合ってた」 そのポニーテールは古泉がやったんだ。 髪が邪魔だったからまとめてくれって言ったら 僕が好きな髪型にしますね、なんて言い出して。 俺もポニーテールは大好きだが、自分がやるとは思わなかったよ。 「彼女が聞いたらきっと喜ぶと思いますよ。 今度会う機会があれば伝えておきましょう」 今度どころか今聞いてるだがな。 何故か古泉は何のサインか知らんが俺にウィンクを投げてくるし。 だからその気色悪いのはやめろ! 男にやられても嬉しくねぇよ。 下校時刻になり、俺は古泉と2人で帰っていた。 ハルヒ達は駅前に先日開店したケーキ屋に行っている。 なんでも3人1組まで食べ放題らしい。 食欲魔人の長門とハルヒにはうってつけの話だな。 隣りを歩いている古泉はいつもより5割増しの爽やかスマイルだ。 「機嫌よさそうだな」 「そうですか? ふふ、そうかもしれません。 僕とあなたが恋人同士に見えたんですから」 ハルヒの話か。その時はお互いそれどころじゃなかったがな。 ん? 俺と恋人同士に見られて何で嬉しいんだ? だって、お前は俺が男だって知ってるだろ? 「ええ勿論知ってます。けど、今回ばかりは涼宮さんに感謝していますよ」 なんだそりゃ、俺はさっさと普通の生活に戻りたいね。 湯船から出たら冷水を浴びるのが習慣化してるし、 お湯に対して異様に警戒するようになっちまった。 ハルヒが望んだからこんな事になっちまった訳だが、一体何時まで続くんだろうね。 「さぁそこまでは。それより」 この手は何だね、古泉くん。 「握手してくれませんか?」 古泉が手を差し伸べてきた。何で今更握手なんだよ。 しかも俺は女の子よりお前と手を繋いでいる回数のほうが明らかに多い気がするぞ。 まぁ、握手くらいならしてやるけどさ。 「うお!?」 手を握ったと思ったら、今度は手をに引かれて 奴の胸の中へと無理やりダイブさせられた。 おいおい握手だけじゃなかったのか。 しかもこの体勢は図らずもあのデートの日と同じ状況ではないか。 あの時と違うのは俺が女の姿ではなく、生来の男の姿であることだけだな。 「古泉?」 台詞まで同じだよ。お前は最近突発的行動が多過ぎやしないか? 「やっぱり抱き心地が違いますね」 そりゃそうだろう。ガキの頃なら大差がないだろうが、 齢16になれば男女の体つきは大分違う。 同じって言われたら別の意味で泣くぞ。 「でも、同じ匂いがします。それにとても暖かい」 ぎゅっと腕に力が入る。古泉は俺よりほんの少しだけ冷たい気がした。 奴に抱き締められるのは嫌ではないが、 ここは往来なので誰かに見られるのではないかと気が気でない。 ホモカップルとして北高に噂が広がるのだけは何としても阻止すべきだろ。 俺が己の安泰な高校生活を送る為に無言で奴のブレザーを引っ張って抗議するが、 哀しいかな古泉は俺の意図を読んではくれなかったらしい。 それどころか俺の肩に頭を乗せると、耳元で 「僕は男性のあなたが好きなんでしょうか? それとも、女性のあなたが好きなんでしょうか。 わからないんです、2人のあなたのどちらが・・・」 と悩ましげに呟くと、古泉はいっそう強く抱きしめた。 息遣いや心臓の音がはっきりと聞こえる。 古泉の手が震えていることだって伝わっている。 俺は何て答えてやればいいのか分からないまま、されるがままに突っ立っていた。 ただ、そうだな。 古泉が答えを見つけるまでは、ハルヒの気が変わらなければいいと思った。 それまでに、俺もこの気持ちに対する答えを見つけておこう。 終
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/836.html
ある日、妹のダイブが来る前に目を覚ました。 珍しい事もあるもんだなぁ。 なんて思ってしまう俺も俺なのだが・・・ 目を覚ました俺は自分の部屋に何か違和感を感じた。 何だ?この感覚は・・・ それを気にしていたらあっという間に時間が無くなった。 俺はその違和感が気になったものの遅刻しては堪らないのでさっさと着替えを済ませ、リビングへと向かった。 「おはよう、母さん」 「おはよー!!あんた、相変わらず時間ギリギリね」 「あぁ、いつもすまな・・・」 思わず俺の時間が止まったね。 なんたって台所に立って朝食の準備をしていたその人はなんとハルヒだったんだからな。 「何?朝からポカーンとしちゃって、まだ寝ぼけてるの?」 「は、ハルヒ!!こんなとこで何してるんだお前!?」 「朝っぱら母親を呼び捨てにするなんていい度胸ねぇ?」 危険だ・・・・・ ハルヒは顔は笑っているが声が笑っていない・・・・ 持っているおたまに得体の知れない何かが集まっていく。 このままだと間違いなく俺の明日は無い!! 「す、すいません!!以後気をつけます!!」 あぁ、俺ってここまでヘタレだったのか。 「分かればよろしい。じゃあ、さっさと朝御飯食べちゃいなさい」 「あ、あぁ、分かった」 とりあえず、状況を整理しよう。 どうやら、今の俺はハルヒの子供らしい。 という事は当然父親もいる訳だな。 ハルヒと結婚した勇気ある奴はどんな奴かね? 早く面を拝んでみたいものだ。 今、何かムカッときたがこれはただ単に腹が減っているからだろう。 そうに違いないさ。 そう考えをまとめ、ハルヒの作った朝食を食っていると誰かが降りてきた。 そう、遂にハルヒの旦那の面を拝める時がきたのだ。 ドアが開いた音のする方へ向いた俺は言葉を失った。 そりゃそうだろ。 そこには、ダルそうにしている俺が立っていたんだからな。 起きてきた俺が食卓に着くとなんとも言えない嫌ぁな雰囲気になった。 この空気はなんなんだ? さっきから俺とハルヒが全く口を聞かない。 これが噂に聞く倦怠期ってやつなのか? 俺は小さな勇気を振り絞って聞いてみた。 「な、なぁ、さっきからどうして二人とも口聞かないんだ?」 すると二人の鋭すぎる視線が俺に突き刺さった。 痛い・・・痛すぎるよ・・・(泣) 「「別になんでもない(わよ)!!話したく無いから話さないだけだ(よ)!!」」 二人とも息がぴったりだった そう言い終わると二人は睨み合いを始めていた。 あぁ、これが夫婦喧嘩というものか。 これは確かに犬もこんなもん食ったら腹壊すわなぁ。 しかし、未来では俺はなんとかハルヒと平等な地位を獲得している様で安心した。 「喧嘩してるのは分かった。で、原因は一体何なんだ?」 また視線が飛んできた。 今度はあのバチバチいってるのも一緒にな。 「「それはハルヒ(キョン)が俺(あたし)の言う事全く聞かないからだ(よ)!!」 またハモってる・・・ さて俺はあえてこの二人にこの言葉を送りたいと思う。 このバカ夫婦がっ!! その後、どうにか喧嘩の原因を聞きだした俺は二人を説教していた。 原因は俺、つまり未来の俺とハルヒの子供の進路の事だった。 「分かった。俺の事をそこまで思ってくれるのは大変ありがたい事だと思うよ。でもな、その事で二人が喧嘩したって意味無いじゃないかっ!!」 俺は机を「バンッ」と思いっきり叩いた。 いつもの俺ならここまでする事は無いだろう。 しかし、さっきの原因不明のイライラが俺をどんどんヒートアップさせる。 未来の俺とハルヒはすっかりシュンとなっている。 それに構わず俺は続けた。 「いいか?自分の事で親に喧嘩されたら子供は辛いんだぞ!!自分が原因なのがどれ程苦痛かなんで分かってやれないんだ!?」 「「ご、ごめんなさい・・・」」 それを聞いた俺は一気にクールダウンした。 「分かってくれればいいんだ。こんな息子だけどこれからもよろしくな」 そこまで言うと俺は急に意識が遠くなった。 気が付くと全ての時間が止まっていた。 いや、厳密には俺と俺の前に立っている奴以外の時間がと言っておこう。 「お前は誰だ?」 「はじめまして。僕はあなたの息子です」 こいつは何言ってんだ? 「何を言ってるのかさっぱり分からん。どういうことか説明してくれ」 「今回の両親の喧嘩がいつもよりすごくて僕の手に負えなかったんです。そこで、よく母さんが「学生時代のキョンは」と言っていたので助けてもらおうと思ったんです」 俺の子よ、苦労してるんだな・・・・ 「そうか、そりゃ済まなかったな。ちゃんと説教しといたからもう大丈夫だと思うぞ」 「えぇ、見てました。本当にありがとうございました」 俺はふと気になった事をそいつに聞いてみた。 「でだ、俺達はいつもあんな感じなのか?」 「いえ、いつもはそりゃもう仲の良い夫婦ですよ。暇があれば四六時中ベタベタしてますから」 「そ、そうか・・・」 イカン、顔が段々熱くなってきた。 その瞬間、俺は何かに吸い込まれるような感覚に襲われた。 「そろそろ時間みたいです。名残惜しいですけどお別れですね」 「あぁ、そうだな。最後に1つ聞いていいか?」 「何ですか?」 「お前は俺達の子供で幸せか?」 「そんなの聞くまでも無いですよ。気苦労は絶えませんけど僕は2人の子供で良かったと思いますよ。では未来で会いましょう」 「あぁ、じゃあな」 そこで俺の意識は完全に何かに吸い込まれた・・・ 朝、違和感の無い部屋で目を覚ました俺はほっと胸を撫で下ろした。 学校では昨夜の出来事のせいでハルヒの顔をまともに見る事が出来なかった。 あぁ、気まずい・・・ その気まずさからハルヒを避けていたら超特大の閉鎖空間が発生したとかで古泉から散々ダメ出しをされた。 その翌日、避けていた事をハルヒに謝ったら 「キョン、あたしを傷物にしたんだからちゃんと一生責任取りなさい!!」 とか、教室で大声で叫んでくれやがった。 そして今、ハルヒに課せられた罰ゲームとしてなんと婚姻届を書かされているのだ。 そもそも俺が18歳にならなければ役所が受け取ってくれないと思うんだが・・・ 「キョン、手が止まってるわよ!!さっさと書きなさい!!」 「へいへい」 そんな理屈がこいつに通用する訳無いか・・・ はぁ、やれやれ・・・ fin
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/18.html
ハルヒ「ちょっと・・・みんな、私を無視しないでよ・・・・・・・」 キョン「うるさいんだよ、お前は毎日毎日、人使い荒くて 何なんだよお前は、何様だってんだ!」 ハルヒ「・・・!!」 キョン「朝比奈さんも古泉も長門も何も言わないけど きっと俺と同じでお前の事うっとおしく思ってるはずだぜ。 くだらないことしてないで、いい加減大人になれよお前。 じゃあな」 ハルヒ「ちょっとキョン待ちなさい・・・!!キョン・・・。 私を一人にしないでよ・・・。もう一人はイヤなの・・・」 ハルヒ「ねぇ!?なんで昨日部室に来なかったのよ!? 今日もサボったら死刑だからね!」 キョン「うるさいから話しかけるな(ボソ」 ハルヒ「え・・・。」 部室 ハルヒ「ね、ねぇ、み、みくるちゃん・・・」 みくる「・・・なんですか・・・」 ハルヒ「み・・・みくるちゃんは!わたしの事無視したりしないわよね・・・」 みくる「・・・・・・・・・」 スタスタスタスタスタ・・・ ハルヒ「み、みくるちゃん・・・」 ハルヒ「!・・・そ、そうだ、ユキ!・・・え・・・?」 古泉「みなさんもう多分ここには来ませんよ。」 ハルヒ「そ、そんな・・・」 古泉「では、私も出て行かせてもらいます」 スタスタスタスタ・・・ ハルヒ「そんな、なんでみんな・・・」 ハルヒ「なんでなの、みんな。・・・私が駄目なの?どこが駄目だったの?ねぇ、誰か・・・」 自分しかいない部室で、ハルヒは独り泣いていた 翌日 教室 ハルヒ「お・・・おはよう!みんなゲンキーッ!」 ハルヒ「・・・・・」 誰も返事を返してくれない。 そのままハルヒは黙りこんで自分の席についた。 休み時間 ハルヒ「・・・」 ヒソヒソ 女子A「聞いた?あの娘唯一の友達だったSOS団とかいうグループの人たちからも 無視されてるらしいわよ。」 女子B「え~可愛そう(笑)。でもあの娘っていつも変なこと言ったりやったりしてるから 自業自得だよね~。」 女子A B「クスクス、クスクス」 ハルヒ「・・・・・・・」 鶴屋さんの反応 ハルヒ「あっ!鶴屋さんおはよう!」 鶴屋「何?みくるやみんなにさんざん迷惑かけて何しらばっくれてんの?みんなもう疲れてるんだよ。!あっ!みくるーッ!おはよう!今日もかわいいねぇ!」 ハルヒ「・・・・・」 コンピ研部長の反応 ハルヒ「あっ!・・・えーっと、誰だか忘れたけどおはよう!」 コンピ「あぁ、もうなんだよ。君にはさんざんやりたい放題されてこりごりなんだ。もう近寄らないでくれよ。」ハルヒ「えっ、なんで・・・」 キョンの妹の反応 ハルヒ「!あっ!キョンの妹!こんにちは!」 妹「ねぇ、なんでおねえちゃんはみんなにひどい事するの?人をいじめちゃいけないって学校の先生言ってたよ?」 ハルヒ「そんな、わたしそんなつもりじゃ・・・」 妹「あっ、あんまりおねえちゃんと話しちゃだめってキョン君言ってたから、じゃあね!」 ハルヒ「・・・・・・」 ハルヒ「みんな無視する…まぁW杯でも見てその話すれば大丈夫よ」 ポチッとな 「……何、この黒い奴。一人で突っ込んで周り見てないじゃない」 「あっもしかして私、この黒いのと同じ…かも」 ハルヒ「わたし、サッカー好きなのよ~!」 キョン「サッカーはお前のことが嫌いだがなっ」 ハルヒ「・・・小笠原が特に好k」 キョン「小笠原はお前のことが大っ嫌いだけどなっ」 ついに登校拒否になってしまったハルヒさん。 おや、なにやら窓の外から聞き慣れた声がします。 ふと見てみると、いつものメンバーが笑いながらあるいています。 ハルヒさんの家の前なのに誰も気にしてないようです。 (私の居場所は本当になくなっちゃったんだな・・・) 暗い部屋の中で体育座りをしているハルヒさん。 こうしてれば自分を傷つける人はどこにもいない。 嗚呼、可哀想 「うう、うっ、わぁ、うわぁぁん。」 怖い夢をみてしまったハルヒさん もう落ち着ける場所はどこにもない。 嗚呼、可哀想 もう誰も信じられなくなったハルヒちゃん (もう虐められるのはイヤ) そう思いながらコツコツ貯めていたお金で遠くへ逃げます そこへキョンが訪れてきました。 キョン「なぁハルヒ、少し金貸してくれよ」 ハルヒ「え、あ、今は・・・」 キョン「ん?なんだこれは・・・ お、金じゃん!しかもスゲー金額!」 ハルヒ「あ、それは!」 キョン「別にいいじゃん。俺ら、友達だろ?」 そう言われ、お金を持っていかれたハルヒちゃん 人生お先真っ暗 嗚呼、可哀相 ハルヒ「えー!なにこれー!もう最悪ぅー!」 キョン「お前の性格がなっ」 ハルヒ「・・・直すように努力するわ」 キョン「努力では掴みとれねー物もあるんだよ、いい加減オトナになれヴァーカっ」 警察「すみません 涼宮ハルヒさんですね?」 ハルヒ「・・・?はい、そうですが」 警察「実は貴方が朝比奈みくるさんの卑猥な画像を インターネット上に公開したとの通報がありまして ちょっと署までご同行願えますか」 ハルヒ「ちょ、あの、それは」 キョン「朝比奈さんの気の弱さにつけこんで 散々酷いことをした罰だ 少し頭を冷やしてこい」 ハルヒ「・・・・」 キョン:それじゃあ、明日は2000年前に行ってピクニックをしよう! ──────────────────────────────── みくる:賛成! ──────────────────────────────── 長門:それはいいわね! ──────────────────────────────── 古泉:じゃあ僕は外国から取り寄せた高級お菓子を持ってくるよ! ──────────────────────────────── 『ハルヒ』が入室しました ──────────────────────────────── 『キョン』が退室しました ──────────────────────────────── 『みくる』が退室しました ──────────────────────────────── 『長門』が退室しました ──────────────────────────────── 『古泉』が退室しました ──────────────────────────────── ハルヒ:・・・・・・ ──────────────────────────────── 長門:しかし最近の若手芸人のつまらなさには腹が立つよね ──────────────────────────────── みくる:そうよね。それを雇うテレビもテレビだわ ──────────────────────────────── 古泉:昔の番組は凄く面白かったよね ──────────────────────────────── 『ハルヒ』が入室しました ──────────────────────────────── キョン:つまらないから早く消えてしまえばいいのにな ──────────────────────────────── 『ハルヒ』が退室しました ハルヒ「(今まで何やってたんだろ私)」 ハルヒは学校の屋上に来ていた ハルヒ「あっちの世界に逝けば 宇宙人や未来人よりも面白いことがあるのかな・・・」 そう呟くと なるべく何も考えないようにして 屋上から身を投げた たまたま教室から外を眺めていたキョンの目に 落ちてゆくハルヒの姿が映ったが キョンは眉一つ動かさず そのまま外を眺めていた 数分後 学校のグラウンドにサイレンの音が鳴り響いた 長門「…」 ハルヒ「あ!ユキ…っ」 長門「これ…」 ハルヒ「え?本?」 長門「読んで…」 ハルヒ「あ…お勧めの本なの?そ、そうね。本はあんまり興味ないけど どうしてもっていうなら読んであげてもいいわよ」 ハルヒ「えっとなになに…完全自殺マニュアル………?」 みんな「王様だ~れだっ?」 キョン「あ、オレだ。じゃあ二番のヤツ、振り返りながら「大好き」ってやってくれ」 長門「・・・私」 長門「・・・大好き」 キョン「なんかそうじゃないんだよな~、もう一回!」 長門「・・・大好き」 キョン「ハルヒ、お前やれ」 ハルヒ「なんで私g」 キョン「やれ。」 ハルヒ「・・・やるわよ、やればいいんd」 キョン「早くやれ、ブス」 ハルヒ「・・・d」 キョン「やっぱりいい。きめえから」 みんな「ぎゃははははははははははははははははは」 キョン「悪いな、今日4月1日だったから調子に乗りすぎた」 ハルヒ「何考えてんのよバカ・・・」 キョン「おま・・・うっ(泣き顔モエスwww)」 ハルヒ「何よ・・・」 キョン「いや、その顔もかわいいなと・・・」 ハルヒ「・・・信じらんない///」 キョン「・・・と言うとでも思ったのか? だいたいちょっと優しくされただけですぐ顔を赤らめるな気持ち悪い。 じゃあ俺は帰るからな。」 バタン ハルヒ「・・・・・・・」 ハルヒ「あ、あのさ、今度のSOS団の活動なんだけど」 長門「…………フッ」(嘲笑) 古泉「あのう、誰に話しかけているんでしょうかね、彼女は?」 みくる「さあ、独り言じゃないですか?」 キョン「SOS? まだ言ってたのかよwww寒っwww」 ハルヒ「あ・・・上靴が。。。」 ~朝会~ 担任「え~涼宮さんの上履が無くなってしまったそうです。 見かけた人がいたら涼宮さんの所に届けてあげください。」 クラス一同「クスクス」 朝比奈「そうですね、許してもらいたかったら以前あなたが 私にしたこと全てをあなた自身も体験して下さい。 まずはコンピ研からですね」 ハルヒ「……え?」 キョン「っくははははは! そりゃいいや、行って来いハルヒ」 古泉「コンピ研で何があったんですか?」 長門「セクハラ」 一同「誕生日おめでとー」 キョン「・・・何て言うと思ったか?」 朝比奈「わーすごーい。勘違いして生きていけるって幸せですよねーww」 小泉「一度入院されたほうがいいのでは?」 長門「死ね。氏ねじゃなくて死ね。」 ハルヒ「・・・・・・・・・・・・」 ハルヒ、クラスメイトからの疎遠増幅 不注意からみくるを大怪我させSOS団からも疎外 映画部、PC部にかけた損害が生徒会に周りSOS団強制解体 それでもどうにかSOSのメンツを集めようとするが誰一人集まらず そしてハルヒは「毎週土日になると街をさまよう電波女」として都市伝説になった キョン「おーい サッカーしようぜ」 古泉「いいですね 実は最近、新しいボールを買ったんですよ その名も・・・涼宮ボール!」 そこにはロープで雁字搦めにされたハルヒの姿 口を糸で縫い付けられているので 喋ることができないようだ 古泉「このボールをよく飛ばすにはちょっとしたコツがありまして」 キョン「ほう どうするんだ?」 古泉「この部分を力いっぱい・・・蹴る!」 そう言うと古泉はハルヒのみぞおちを思いっきり蹴り飛ばした ハルヒ「・・・・!!」 口の隙間から液体が溢れ 糸が赤く染まる 古泉「あらら・・・ボールが裂けてしまったようですね」 キョン「ははは 水風船みたいだな」 キョン「ハルヒ誕生日おめでとう、意地悪して悪かったな」 ハルヒ「そんなのいいのよ~!ありがと!キョン、みんな!」 古泉「さあ、ロウソクの火を消してください、涼宮さん。」 ハルヒ「そうするわ、(フゥー)」 キョン妹「消えた消えたー♪」 キョン「ハルヒの生命もこの火の様に早く燃え尽きてほしいよな」 みんな「ぎゃははははははははははははははははは」 長門「ww」 ハルヒ「なにこれ・・・まさかドッk」 みくる「ドッキリなんかじゃないですよ、現実なんだよぉっ!!」 古泉「あぁ…いけない。 ちょっと忘れ物をしてしまいました。 取ってくるから待っていて下さい。」 ハルヒ「分かったわ。」 ――――――――――――5分―――――――――――――10分――――――――――――――――20分―――――――――――――――30分――――――――40分――――50分―――――――― ハルヒ「遅いなぁ…」 キョン「お前黒いな…」 古泉「クスッ…それはお互い様でしょう…。 さぁ早く行きましょう。遅れますよ。」 ――――――――― ハルヒ「……おそい…なぁ…」 古泉「ちょっとシャーペンお借りしますよ。」 ハルヒ「え?あ…うん」 キョン「俺も借りるぜ。」 長門「借りるよ。」 みくる「私にも貸してね。」 ハルヒ「ぇ?ぇ?…… …私の分が…無くなっちゃう…」 古泉「ぇ? あなたには別に必要ないでしょう。クスクス…」 キョン「激しく同意。」 ハルヒ「…………」 ハルヒ「キョン、ちょっときなさい!」 キョン「は? なんで俺がお前の言うこときかにゃならんのだ」 ハルヒ「うるさいわねぇ! いいからついてきなs」 キョン「うるさいのはお前だ。きゃんきゃんきゃんきゃん喚きやがって」 ハルヒ「な、なによ! アンタなんかが私に……」 キョン「鬱陶しいんだよ、マジで。もううんざりだ、お前に付き合うのは」 ハルヒ「わ、私だって……う、うんざりよ! アンタなんかとは、もう口きかないんだからね!」 キョン「ああ、そうしてくれ。というか、そのつもりだ。わかったら俺に近寄るな」 ハルヒ「あ、アンタがどっか行きなさいよ!」 キョン「へいへい。じゃあな、馬鹿ハルヒ」 ハルヒ「…………っ……なによ、馬鹿……」 涼宮ハルヒの構造 キョン「なあ、古泉、何でハルヒは憂鬱の後、あんまり活躍出来ないんだ? 古泉 「おや、あなたは、またあの灰色の空間に閉じこめられることをお望みですか?」 キョン「いや、もう二度とゴメンだ・・・」 古泉 「要するにこの物語における涼宮さんの役割は終わってしまったのですよ。 彼女は平凡な高校生であるあなたをキテレツな言動と行動で振り回し、 あげくの果てに暴走し異世界へ拉致監禁までしようとした。 そこで、窮地に陥ったあなたが王子様のキスをして彼女の目を覚ましてあげたのです」 美しい話じゃないですか。 つまるところ、彼女があなたに与えられるお話など もう、じれったいラブコメくらいしか残っていないのですよ」 キョン(ハルヒ、えらく、ひどいこと言われてるぞ・・・) ハルヒ「ちょっと来なさい!」 キョン「何か言ったかトラブルメーカーさんよ。」 ハルヒ「はぁ!?あたしが・・・」 古泉「キョン君もあなたのわがままにつきあわされるのがいやだと言ってるんです。 わかりませんか?(ニコニコ)」 ハルヒ「そ・・・そん」 キョン「そういうことだ。古泉、帰るぞー」 古泉「わかりました。」 キョン「二度と関わるなよ、トラブルメーカーさん。じゃあな。」 ハルヒ「あたしが・・・トラ・・・いやぁぁぁああああ」 今日もSOS団から無視をされたハルヒ。 自宅の部屋のベッドで泣きながらうなだれていると、机の上に置いた ハルヒの携帯のランプ部分が点滅しているのに気づいた。 人から電話やメールなどは滅多にこないので、いつもマナーモードになって いるため、偶然机に目がいっていなかったらきっと朝まで気づかなかった だろう。 ハルヒ「このメール・・・キョン・・・バカ・・でもありがと・・」 メールの送り主はキョンからのもので、メールにはこう文面がつづられていた。 Title:ハルヒへ さいきん冷たくしてごめんな。 っていっても、あれは本当はみんなの演技なんだ。 さいきんハルヒがみんなにわがままばかり言うから、ちょっ とお前をからかってやろうと思ってたんだ(笑) しつれいなことをしたと今は思ってる、本当にごめんな。今日はもう ねるよ、また明日学校で。SOS団の活動もがんばろうぜ。俺も ボーっとしてないで、ちゃんと活動に参加するからさ。 ケッセキなんてするなよ、お前がいないとつまらないからさ(^▽^) キョンより。 キョンに勇気付けられたハルヒは、明日からは心を入れ替えて頑張ろう、と 心から思ったのだった。 ――――― まとめてる人「ヒント:縦」